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61③
しおりを挟む隣で歯軋りの音が聞こえる。
そろそろ限界かもしれないけど、ここで癇癪を起してはダメだわ。
「娘は貴方達のお孫さんのお世話で疲れているのに、家事も通常通りさせられているのに、生きがいの仕事を何癖つけられ、あげく義理だというだけのけ者にされたと聞きました」
「そんな!」
「勿論、リサからではありません。隣近所からの証言に、隠し映像には虐待にまがいの扱いに息子さんから暴行を受けた証拠もありますの」
怒っていないわけではない。
だけど、大事な娘が育児で精神的に疲れているのをみてなんとかしたいという気持ちだけは理解できるわ。
ただ、頼みやすいリサにすべての負担が行った。
すべてを丸投げしておきながら感謝もないなんてあんまりだわ。
「娘は出産経験もありません。ですが私達に一度も愚痴を零しませんでした。何故か解りますか」
解らないという表情だわ。
「認めて欲しかったんです」
「え?」
「義理だからこそ、気遣いが必要です。お二人に嫁として認めて欲しかった…ただそれだけです」
私も夫の両親に最後まで認めてもらえなかった。
それでも努力を怠らなかったわ。
努力は実らなかったけど。
「娘は離縁しても貴方達を責めるようなことは言っていませんでした。なのに貴方達は娘を責めるだけなのですね。謝罪も、お孫さんの面倒を見た感謝もない…」
「でも…だって!」
「私達だって大変なんだ!」
「だったら、今度こそ血のつながった家族だけで支え合えばいいでしょう?」
家族だから助け合うというのであればそうすればいいのだわ。
リサは家政婦でしかなかったのだ。
そう思い知らされた。
「私はただ娘を…」
「その為に私の娘を奴隷のように扱っていいはずがありません」
孫可愛さにリサにしたことはあまりにも酷い仕打ちだわ。
「離縁の手続きは終わっております。幸い子供がいないので教育費の支払いは必要ありませんが、法律上、慰謝料を支払うのはそちらです!」
「だから離縁を取り下げてください!」
「既に届け出を出しています。一度離縁した場合は、余程の理由がないと無理です」
必要最低限の法律も解らないのか。
虐待を受けた女性を守る為に法律上暴行を受けた妻を元夫と復縁するには夫が側が更生した証を見せなくてはならない。
罪悪感を持っていないロンドに無理な話だわ。
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