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44③
しおりを挟む邸内の調度品はほとんどなくなった。
次に運ばれたのはジュエルボックスだった。
「何をするの!」
「こちらの品も、持ち出すように言われております。おい鑑定をしろ」
「はい」
鑑定士と思われる男が宝石の鑑定をする。
「それは!」
「邸内にある宝石のすべては鑑定しろ…調理器具も鍋、包丁全てもだ!」
「そんな!これでは追いはぎじゃない!」
調度品や、美術品だけでは飽き足らず何もかも持っていくつもりだ。
「止めて!本当にすべて持ち出す気なの!これは…」
「子爵夫人からの命令です。包丁に関しては名前が刻まれています。契約上はリサ嬢の品ですので」
「こちららはお返しします」
そう言いながら返したのは普段から母が身に着けているお気に入りのペンダントだ。
「私のペンダント…」
「上等なジュエルボックスに不釣り合いな偽物ですな」
「は?」
偽物だって?
あのペンダントは新婚旅行の時に購入した品だ。
「このダイヤは偽物です…ガラスです」
「こちらのルビーのペンダントも酷い偽物だな」
他にも僕が首都の服飾店見つけたブレスレットだ。
ルビーがついていてお得だったから買ったものだ。
「ここに飾ってあるか首飾りもすべてイミテーションです。リサ嬢の品ではないでしょう」
「こちらはどうされますか?」
「婚約指輪と結婚指輪か…これもブランド品ではない。しかも粗悪品か…なんと酷い」
確かにブランド品じゃなかった。
けろリサは喜んでいたんだ。
第一、ブランド品なんてリサに解らない。
だからノーブランドでも高価な品だと言ったんだ。
「しかも文字に傷がある…中古品だな」
「ロンド、貴方はそんな指輪を贈ったの?」
「どういうことだ!」
隣で聞いていた二人が唖然とする。
婚約指輪と結婚指輪は僕が用意すると言っていた。
僕の稼ぎでと。
だから二人は知るはずもない。
「ロンド、貴方そんな不良品を贈ったの!」
「いくら何でもないだろ」
「いや…それは」
僕の給料ではブランドの指輪を買う金がないなんて言えなかった。
リサも、特に気にしていなかったし。
「ここまで酷い指輪はないですね」
「これも粗悪品ですね。物を見る目がまるでない」
「おい!」
いい加減にしろ!
さっきから無礼三昧で耐え切れなくなる。
「ある程度見たか?」
「ああ、後はこの邸の権利書と土地の権利書だ」
なんて酷いんだ。
邸の中の品をすべて奪うだけでは飽き足らず、邸と土地の権利書まで!
けれど僕は勘違いをしていた。
この邸のほとんどの所有権は僕にない事を。
あくまで僕達はリサがいたらこの邸に住むことができていたことを。
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