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43②
しおりを挟む「この人でなしが!」
「は?」
今何て言った?
この僕に向かって人でなしだと?
「最低な男。妻は貴方の承認欲求を満たす道具じゃありません」
「道具の方がマシでしょう。手入れもされない道具でしかないのだから」
「無礼な!僕を誰だと…」
「妻を搾取して奴隷のように使った最低な男です。報告書には追加しなくてはなりません」
「何だと!」
すべてが勘違いだというのに、偽りを真実だと伝えるだと!
冤罪だというのに、そんなことが許されるわけがない。
「まぁ本日は念のために確認に来たのと、貴方の人間性はご近所の証言と一致しました。貴方は奥方を虐待したのは事実であると報告した後に弁護士がいらっしゃるでしょう」
「ふざけるな!」
「ふざけておりません。それから奥方…いいえ、元奥方に接触することを禁じます。これは証明書です」
目の前に突きつけられた書類は長ったらしく書かれていて正直読む気にもならなかった。
「商業ギルドにも報告が行きますので万一違反された場合、保護協会から注意が来ます。その注意を受けても聞かない場合は厳罰が行われます…加害者である貴方が被害者に万一手を出すことも考えられます」
「待て!僕は加害者じゃない…虐待だって誤解だ!妻が大騒ぎをしているだけだ。ちょっと話をすれば謝るだろう!」
「話になりませんね。典型的な暴力夫ですね」
「妻を力づくで抑え込む典型的なパターンです」
僕の言葉は何を言っても聞こうとしない。
大体弁護士を雇うなんて何を考えているんだ。
離縁だって本気じゃないはずだ。
世間体もあるだろうし、出戻りなんてみっともない真似を――。
「それから言い忘れてましたが」
「何だ」
「どうぞ。お入りください」
視線を玄関先に向けた後、ぞろぞろと男達が邸に入って来た。
「何だお前達は…」
「ちょっと何なの!」
勝手に人の邸に入って来た男達は商業ギルドで見かけた男達だ。
「この度、この邸内にあるリサ嬢の私物は運ばさせていただきます」
「はぁ?何を言っている!」
「そうよ!ここにある調度品はすべて…」
「リサ嬢の私物です」
ギルド達が勝手に荷物を運んでいく中、シールをぺたぺたと貼られていく。
「こちらはすぐに運べませんので」
「テーブル、調度品、美術品に食器などすぐにでも運び込むように依頼を受けています。とっととどいてください」
「ああ、それからそのウィスキーの入ったグラスもね」
「待て!それは私の…」
「子爵夫人よりちゃんと鑑定書もいただいています。この品はリサ嬢のものです」
嘘だろ?
邸内のほとんどの私物を奪うというのか!
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