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しおりを挟む医師の診断を受けた後に私は睡眠不足と栄養不足。
ストレスで円形脱毛症になっていることが解り、しばらくは絶対安静とのことだった。
「殺してもよろしいですか」
「いいわ。私が許しますわ」
言うまでもなく、ばあやが激怒した。
お嬢様も焚きつけるような真似をしないでください!
「お嬢様は気丈夫な方です。ストレスで剥げるなんて」
「禿げるって言わないでくれる」
「余程ストレスを溜められたのですね!学生時代貴族にどんな嫌がらせを受けても平然とする鉄の精神をお持ちでしたのに」
遠回しに図太いと言いたいのかしら?
でも、女は図太く逞しくがモットーとする子爵家の教えだったのだけど。
私が通っていた学校は名門校で貴族のご令嬢も多く。
商家の娘でも平民の部類に入る生徒は例え裕福でも差別を受ける。
裕福だったらお金で裏口入学をしたと思われるし。
際立つ容姿があれば試験官と関係を持ったなんてあることない事噂を流されるのだから。
まぁ、逆を返せば怖いからだけど。
私の入学した年は、平民や下級貴族が生徒代表に選ばれ。
その後に寮長に選ばれ、その中でも生徒を監督する立場。
監督生に選ばれたのだ。
監督生に選ばれるのは誉で、三年間勤めることは就職にも有利だし。
援助金もでるので、貧しい家の生徒からすれば大助かりだ。
その分嫉妬の対象になるのだけど。
私も嫌がらせを受けたが、行儀見習い時代に会得したスキルで難なくスルーした。
それ故に一部の生徒から鋼鉄の女なんて呼ばれるようになった。
「許せません!」
「ばあや、あまり怒ると血圧が…」
バタン!
「ばあや?ばあや!」
「申し訳ありません…薬を…」
「飲んでなかったの!」
興奮しすぎて血圧が上がってしまい倒れるばあやに私達は慌てふためいた。
「ばあやさん、悪者は相応の報いを受けるから問題ないわ」
「アン様…本当でございますか?」
「ええ、死ぬよりも酷い目に合わしてあげる」
片目でウィンクするお嬢様は大変愛らしい。
でも、その言葉でその表情は喜べない。
「アン」
「叔父様、もう布石は投じてありますの。今から作戦変更は無理ですわ…今頃どんな目にあっているかしら?」
既に何かした後だと知り、私は恐ろしくなった。
でも聞けない。
「先生」
「はい!」
「とりあえずサインをお願いしますわ」
「え?」
お嬢様が私に差し出したのは書類のようだった。
「こちら、離縁の手続きの書類ですの。教会に脅し…お願いして早急に準備していただきましたの」
「アン、私はもう何も言わない」
「賢明な判断ですわ」
私も何も聞かないことにした。
けれど、脅したぐらいでこんなに簡単に承認されたものだわ。
離縁するにしても手続きに時間がかかるのに。
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