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しおりを挟む頭を強く打った事で軽い脳震盪と精神的な疲れで熱が出た私はひとまずティンファニー伯爵家で療養することになった。
私が目を覚ましたのはあの騒動があった後から丸一日過ぎてから。
目を覚ました時は…
「リサ!」
「気がついたか!」
「お嬢様!」
両親が傍にいた。
何故か暇を貰って田舎に帰ったはずの乳母もいる。
「何でばあやが…」
「子爵夫人よりお手紙が来まして。お嬢様の事を」
奥様…
何故ばあやにまで伝えたの?
「ここ最近お嬢様からの手紙に違和感を感じました。もしや何かあったのではないかと思い、無礼ながら子爵夫人にお伺いしたのです」
「ばあや…」
元は平民であることから奥様は気さくな方だ。
ばあやに対しても友人に接するような感じで、田舎に帰った後も手紙のやり取りをして連絡を取っていたそうだが。
「私はお暇をいただいた身です。ですから差し出がましいと思いましたが…お嬢様が日に日にやつれてきていると奥様からもお伺いしました」
「そんなにやつれたかしら?」
「ええ、お顔も真っ青でしたよ」
…でしたよってことは。
こっそり様子を見に来ていたの?
「私は情報をかき集め、お嬢様が虐待を受けていると知りまして」
「お母さん…」
「ごめんなさいねリサ。まさかここまでひどいとは思わなくて…何度も手紙で彼に一度話をしたいと書いたのだけど。忙しいので時間が取れないと。里帰りを頼み込んだけど」
「あの馬鹿男は無礼にも奥様を悪しざまに扱い暴言を吐いたのです!」
「ばあや、もう止めなさい」
「いいえ、黙りません!あの男はいい加減子離れしてはと言い、いつまでもおんぶに抱っこではお嬢様が自立出来ないなどと!自立って何でございましょうか!」
「ばあや、あまり怒ると血圧がありますよ」
「奥様が私をなだめるなんて逆でございます!」
血圧高めのばあやが怒るとまた倒れる。
もう高齢なのだからあまり無理をして欲しくないのだけど、それほどにまで怒っていたのね。
「リサ、すなまかった…表立って騒いだら立場が悪くないのは君だ」
「最初に私がシンパシー家に使用人を派遣すると言ったせいで、リンダさんを怒らせてしまってね。なんとか援助だけでも思ったのだけど」
「は?」
「援助はしたのに改善されず、調べたらそのお金はサンディーさんの為に使われていたと知って愕然としたわ」
両親が遠回しに私を援助しようしてくれていたのにも驚いたけど。
私の為に援助したお金を自分達の懐に入れようとしていたなんて信じられない。
「あちらの言い分は、家計を一緒にしているかららしいわ」
「飽きれた…」
愛情はもう一滴も残っていない。
ただ落胆と軽蔑しかない私は顔も見たくないと思ったのだった。
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