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しおりを挟む精神的な打撃を受けた義母は涙も引っ込んだのか、言い返そうとする。
ただし人生経験に関してはスコット先生達に勝てるわけがなかった。
「あら?もう泣かないの?学生時代も、酷いわぁ!しくしくってしていたのに」
「本当に見ていて気持ち悪かったわ。貧民街の子供でも7歳を過ぎたらそんな子供だましに引っかからなかったわ」
「母親になってマシになったと思ったのに同居して赤ちゃん返りなんてね?」
酷い、酷すぎる。
しかも笑いながら言うものだから威力が半端ない。
「流石帝国の三鬼」
「え?」
「先生ご存じありませんでしたの?御三方はかつて教育の場では女鬼教師って言われていたのですわ。私も噂だけですが、小説にもなってますのよ」
なってたんだ…というかお嬢様。
どれだけのジャンルの小説を読み漁っていたのか。
「当時、今よりも女性が生きにくい時代でしたので。私も伯爵家の恩恵がなければもっと肩身が狭かったでしょう」
「侍女長」
「そんな時代で女性が教師になる制度が導入された年に、史上初、女性教師に就任したのがマダムスコットです。生まれが貧しい事から嫌がらせは日常茶飯事だったそうで…」
「もっと酷いのは野蛮な男がマダムスコットを手籠めにしようとしたことですわ」
「アン!お前はどうしてそんな本ばかり読んでいるんだ!」
早熟すぎるのも問題だわ。
お嬢様は恐ろしいスピードで知識を得ているけど。
何時か間違った方向に進まないか心配だわ。
「私も強い女性になりたいの。そう、あんな風に女性を虐める下衆の極みを成敗できるぐらいに」
「はぁー…」
深いため息が聞こえる。
旦那様の苦悩はいかほどのものなのか。
「教師を馬鹿にしたくせにアンタは自分の娘、息子の教育もなっていないね?出戻り娘を甘やかすだけ甘やかすなら、このまま娘と同居して仲良くしたらどうだい…」
「その場合は、この邸の家主はリサちゃんだったわね?」
「何だと!」
義母だけが標的にされていたが、次の標的が義父に変わった。
「この邸の邸はほぼ立て直したも同然だ。その費用のほとんどを支払ったのはリサちゃんだ」
「リフォーム代金、家具、そのたもろもろの費用もね?」
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その費用は私が支払った。
維持費に関しては金銭ではなく別の方法で支払ったのだ。
「離縁するなら財産分与は発生する…だけど、特別な措置が取られるね」
「こんな家欲しくないだろう。その場合はアンタ達が買い取る場合、相当な金額になるね」
「そんな馬鹿な!」
まさか義父は知らなかったのだろうか。
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