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邸の前で別れたはずの三人だった。


「証拠はばっちりですよ。子爵夫人」

「いい仕事をしてくださいましたわ」


まるで打ち合わせをしたかのようだった。
そもそも、このタイミングで皆さまがこの場にいることに疑問を抱いていた。


「私に連絡をしてくれたのはこちらにいらっしゃる御三方です」

「え!」


「以前から、リサが彼らに虐げられているのではないかという疑いを持っていたそうですが、動けませんからね」


溜息をつく奥様にスコット先生が教えてくれた。


「帝国内でも女性への虐待を罰するのは難しいんだよ。子供の虐待何て役人が保護したくて注意を促すだけだ。私が以前にも通報したんだ」


「通報…」

「でも、リンダはこの通り泣き落としが上手い。まぁ本人は自覚がないから余計たちが悪いし、証拠が少ない」


「いざ裁判になっても証言者の言葉は当てにならない。コロコロ変わるもの」


「だから物証と動かぬ証拠が必要だった。だから少しばかりここを使ったんだよ」


頭を指しながら告げた三人には頭が上がらない。
あの時点で彼女達は作戦を決行していたということになる。


「でも、先ほど」

「勿論、あの時点で私達は強行突破というのは気が引けたよ。せめて離縁にもちこめればと思ったんだ」


「私達は子供を守る立場だ」

親を戦争で亡くした子供や、若い女性を保護している彼女達は悩んだ。
万一、シンパシー家を公で罰したら当人同士の問題で終わらないからだという。


「だけど、リサちゃんがあまりにも不憫でならなくてね」


「何を言っているの!」

力なく座り込んでいた義母が声を荒げたが、スコット先生は動じることはなかった。

まるで子供に言い聞かせるような言い方をしたのだ。


「リンダ、アンタはまだ解らないのかい?」

「スコット先生、もう無駄です」


「自分の娘可愛いさに嫁を蔑ろにして、消耗品のように使っても罪悪感を抱かないなんて」


「だから同居は娘天国嫁地獄って言われるんだ」



一時騒がれた言葉だ。
野蛮な言葉だと一部では批判されていたが、身を持って経験したので痛い程理解できる。


「同居ってのはお互いを思いやる心がないと成立しないだろ!アンタはそんなことも解らず何が母親だ!」


「貴女に何が解るのよ!私は間違った事をしていない…していないのに!」


「泣くんじゃないよ。泣けばなんでも思い通りになるなら私も泣こうか?」

「あら?じゃあ私も泣くわ。えーん、えーん」

「ちょっと、いい年下おばさんが痛すぎるわよ。でも、リサちゃんならありですよね伯爵様」


緊迫した状況だったはずだ。
なのに空気が少し緩み、何故か旦那様にもその被害が及んでいた。



旦那様は視線をそらしていたが。


「叔父様、顔に出てますわ。先生が泣いておねだりしたら邸ぐらい建てますわよね?」


「おいアン!」

「半分冗談ですわ」



お嬢様、その冗談は笑えません!
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