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しおりを挟む痛みで意識が朦朧する中、悲鳴が聞こえた。
「うっ…何?」
地面に倒れるロンド、一体何が起きているか解らなかった。
「リサ、大丈夫か」
「えっ…」
温もりに包まれていることに気づく。
「ど…して」
「すまない」
私を抱き上げる旦那様に私は安心感を覚え涙を流した。
「旦那様ぁ…」
「もういい。もういいんんだよ」
そのまま抱きしめてくれる旦那様の腕の中で私は泣いた。
「何だお前…ぐぁ!」
「それは私の台詞だ。妻を虐待するだけでは飽き足らずこんな真似を。妻を殺そうとするとは」
「えっ…」
義母が唖然とする。
隣にいる義父も呆然としている。
「リサ先生!」
「お嬢様…」
遅れてお嬢様と侍女長に…どうして奥様まで。
「リサ!なんてことを!」
「なっ…子爵夫人!」
「どうして…」
床に這いつくばっているロイドと呆然と立ち尽くして義母と義父もガタガタ震えていた。
「アン様」
「はい」
お嬢様が、邸内に飾ってある小物に触れる。
すると――。
「音声録音機ですわ」
「なっ!」
「ちなみにですが、テーブルに置かれているぬいぐるみはこのように」
耳の部分を押すと立体的な映像が浮かび。
『このハズレ嫁が!』
『きゃああ!』
先ほどのやり取りが映像に残っていた。
「これ、虐待ですわね?一度ならず二度も殴ろうとしましたわね?しかも素手ではなくオブジェを手に取ってましたわね?」
子爵夫人が冷たい言葉を浴びせる。
続くように侍女長が睨みつけ淡々とロンドの罪を告げた。
「国内では妻に対する精神的な虐待、経済的虐待は重罪ですわ。しかも身体的虐待なんてもっと酷い…」
「虐待だなんて!」
「感情的にかっとなった?それにしてはあまりにも酷いですわ」
「先生!膝に血が…腕にも!」
頬を殴られただけでなく倒れた拍子に頭を打ち、頭からも血を流していた。
「今どきテーブル返しをするなんて、どんな飲んだくれ亭主なのかしら?酒の匂いが酷いわ」
「本当に時代錯誤ですわ」
酒と言ってもロンドは素面で飲んでいるわけではない。
部屋の中が酒の匂いがするのは事実であるが片付けていないウィスキーのボトルの所為だ。
「女性の体を切りつけるなんて最低よ!こういうのを屑夫っていうのよ!」
「なっ…」
「無礼者!この私に睨むとは何事なの?私は伯爵家の令嬢よ…お前ごときが私に食い下がるとはずいぶん偉くなった者ね?」
「僕は…」
「だから私はお前ごときとリサ先生が上手く行くはずがないと思ったのよ。平民であっても先生は上流階級出身と落ちぶれた商家の貧乏の家の息子なんて…ああ、他の貧しい平民に失礼だったかしら?寄生虫の害虫が!」
お嬢様の口調が…乱れすぎている。
普段から言葉遣いに気をつけていたはずなのに。
「リサ先生は伯爵家の家庭教師。つまり伯爵家に喧嘩を売ったことよ」
「アン様、伯爵家だけではありませんわ。我が子爵家を侮辱したも同然。今後、一切の関係を断ち切らせていただきますわ」
「そっ…そんな!」
ルアーノ子爵家は三大商会の一つ。
しかも旦那様であるルアーノ子爵はギルド長でもある。
彼を敵に回せばまともな商売はできないだけではない。
貧しい平民にも援助し慈善活動を行っている彼を侮辱すればどれだけの人を敵にするか。
「私、あの時言いましたわよね?必ず大事にすると…その答えがリサを搾取し続け殺そうとしたなんて許しませんわよ!」
「違います!僕は…」
「言い訳は結構。離縁です」
床にたたきつけられた離縁状に言葉を失うロンドだったけど奥様は無視をして義母に視線を向ける。
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