32 / 169
32
しおりを挟む僅かな時間、静まり返る。
私が何を言っているのか理解できなかったのか、ロンドは顔を引きつらせ笑っている。
「何を馬鹿な事を…拗ねているのか」
「そうよ。少し私達がミレイのお世話を頼んだのに」
「こんな馬鹿な事を」
彼らにとっての私は無償で働くメイド以下。
その程度でしかないのかと思ういら立ちを感じる。
でも泣くことはなかった。
「離縁状は後日用意します」
「何を言っているんだ」
「私は邸に戻るまで馬車の中で考えていたんですよ。和解する道を」
「大げさな…」
この期に及んでロンドはそんなことを言っているのね。
「子供の相手…我儘なお嬢様の遊び相手」
「なっ!」
昨日の暴言を告げるとロンドは驚く。
「リサさん!貴女…」
「あの時偶然にも馬車で伯爵家に戻ってきていたのです。お嬢様と一緒に」
「えっ…」
「私は情けなく思いました。ここまで愚かだったとは…」
「何だと!」
私は冷めた目で睨む。
ずっと逆らわない従順な妻でいた。
ロンドからしても私が言い返すなんて信じられないだろう。
「どうして貴方は変わったの…同居してからおかしくなってしまったわ」
「僕はおかしくない!」
「同居する前は私の仕事に理解をしめしてくれたし。私を見下すようなことは言わなかった。実家だから亭主関白を気取りたいと思ったけど、限度があるわ」
「なっ…」
「私は貴方の承認欲求を満たす道具じゃない。私にだって気持ちはあるわ…お義姉さんを助けたい気持ちはあるけど、どうして私だけ蔑ろにされるの?」
「蔑ろだなんて酷いわ…酷すぎるわ!わぁぁぁん!」
「なんて酷い事を!言っていい事と悪い事があるだろ」
義母は心が弱い人だった。
以前から少しだけ厳し事を言われれば邸に戻り泣きだしていた。
私も強く言えなかった。
「お前!」
胸倉を掴まれるも…
「泣けば貴方は解ってくれた?私の味方になってくれたのかしら?」
自分でも驚いた。
こんな皮肉めいた言葉を吐くなんて。
「リサさん!どうしてしまったの!」
「おかしいぞ!今まで素直でなんでも言うことを聞いていたのに」
「私はずっと貴方達に認めて欲しかった。家族として認めて欲しいが為にはいはい言うことを聞きました。でも間違いだと思ったんです」
「我儘もいい加減にしろ!このハズレ嫁が!」
「きゃああ!」
顔を殴られ床に叩きつけらる。
倒れ込んだ私は思わずテーブルクロスを掴み、テーブルに置かれているお皿やコップが床に落ちて破片が腕に刺さる。
「あっ…僕は悪くないぞ!リサが悪いんだ…夫に逆らうから悪いんだ!」
泣くものですか
こんな男に屈するなんて屈辱だわ。
「何だ!その目は!」
抵抗するかのように睨みつけたのが気に入らなかったのか胸倉を掴み更に殴ろうとした。
1,929
お気に入りに追加
5,152
あなたにおすすめの小説

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。
Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。
二人から見下される正妃クローディア。
正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。
国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。
クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。

【完】お義母様そんなに嫁がお嫌いですか?でも安心してください、もう会う事はありませんから
咲貴
恋愛
見初められ伯爵夫人となった元子爵令嬢のアニカは、夫のフィリベルトの義母に嫌われており、嫌がらせを受ける日々。
そんな中、義父の誕生日を祝うため、とびきりのプレゼントを用意する。
しかし、義母と二人きりになった時、事件は起こった……。

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない
ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。
ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。
ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。
ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。


【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです
との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。
白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・
沈黙を続けていたルカが、
「新しく商会を作って、その先は?」
ーーーーーー
題名 少し改変しました

出て行ってほしいと旦那様から言われたのでその通りにしたら、今になって後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
コルト第一王子と婚約者の関係にあったエミリア。しかし彼女はある日、コルトが自分の家出を望んでいる事を知ってしまう。エミリアはそれを叶える形で、静かに屋敷を去って家出をしてしまう…。コルトは最初こそその状況に喜ぶのだったが、エミリアの事を可愛がっていた国王の逆鱗に触れるところとなり、急いでエミリアを呼び戻すべく行動するのであったが…。

婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ
青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。
今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。
婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。
その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。
実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる