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しおりを挟むその後グレイスさんと別れた後に馬車で伯爵家に帰る途中。
「先生、あの家に帰るのですか」
「お嬢様…」
「私はこれまで先生のお立場を深く考えず勝手を申しました。ですが間違っているとは思っていません。やはり離縁すべきだと思います」
私の手を握りながら泣きそうな表情だった。
痛い程に伝わってくるからこそ、笑って大丈夫だなんて言えなかった。
「先生の名誉を傷つける気はありません。ですが我慢するだけが美徳ですか?先生がぼろぼろになっていく姿をご両親が見たらどうなりましょうか」
お嬢様の言っていることは正しいのかもしれない
世間体を気にした世の妻達は耐えるしかないと離婚に踏み切れない。
「今の世は女性に厳し過ぎます。でも私はこのまま先生が搾取され続けるのを見ているなんてできません」
私は臆病だわ。
言いたいことを言わずにたえるのが嫁だなんて勝手に思い込んで。
確かにお姑様に仕えるのが嫁の形。
でも嫁は都合の良い道具でも召使でもない。
私はちゃんと動かなくてはならない。
ちゃんと意志を伝えよう。
「もし、私が離縁されたても先生のままでいさせてくださいますか」
「当たり前です。叔父様は有望株ですわ。永久就職をしたらいいんですわ」
「それは旦那様が気の毒ですよ」
私を励ます為に言ってくださっているのだろう。
旦那様と私とでは世界が違い過ぎるし、それに旦那様には思い人がいると聞いた。
お嬢様曰く、片思いで気持ちを伝えることもできないとか。
きっと素敵な女性なのだろう。
あんなにも素敵な旦那様の心を射止めるのだから。
「それでいつ離縁されるのですか。何でしたら叔父様にお願いして弁護士を同行させても」
「お嬢様、離縁が前提なのですか」
「当然です!グレイス様のお話を聞いて確信したんですから」
確かに場合によっては離縁になるかもしれない。
ただしまだちゃんと話をしていない。
「お嬢様は夫の事を良く思っていませんでしたね」
「はい、嫌いを通り越しています」
「おじょーさま…」
そんなに嫌っていたの?
前々からロンドに対して厳しいと思っていたのは男性に対して厳しのだと思ったけど。
「今でも先生の伴侶とは認めておりません。あの方は先生とは志が違い過ぎます」
「そう…ですか」
「ええ、ノブレス・オブリージュを旨とする先生のお考えを理解できない馬鹿な男。ですから結婚の時も心から祝福できませんでしたの」
表向きは祝ってくださったけど、本当は嫌だったのね。
そう思うと申し訳なくなるのだった。
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