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しおりを挟む伯爵家ではその日、勉強を終えた後に無理やりエステに連行されて行った。
「お嬢様、いけません」
「ダメよ。疲れた顔をしてるんですから」
無理矢理馬車に乗せられ、そのままエステに連れて行かれた。
首都では貴族の御用達となっているエステサロンで私達のような平民が簡単に足を踏み入れるなんてできないのだが。
「お待ちしておりましたティンファニー様」
「今日はよろしくお願いします」
「承知しました。そちらのお嬢様ですね」
お嬢様?
私はもう結婚しているしお嬢様なんて呼ばれる年齢じゃないのに。
「嫌だわオーナー。先生は既婚者よ。でも、まだまだお若いけど」
「それは失礼いたしました。では本日は贅沢美肌コースでございますね。ではどうぞこちらに」
「えっ…」
訳が解らない状態で私は個室に連れて行かれてバスローブに着替えさせれた後にお嬢様と一緒にエステの贅沢コースを受けたのだった。
「随分お疲れですね。お若いのに…」
「すいません」
「謝られることはございませんが、肩こりもそうですが肌の荒れ具合から栄養不足、睡眠不足が心配ですね。最近眠れていますか?」
「いえ…」
眠りたいけど眠れない。
ミレイが夜泣きするし、二度寝をしても心配になり眠れない。
おかしな話、仕事をしている時はリラックスできる。
逆に仕事以外、特に家ではくつろげないなんて皮肉だわ。
「先生、無理しないでください」
「お嬢様?」
「どんな表情をされているか自覚がありますか?家に帰りたくないって顔をされてますわ」
「そんなことは…」
ないなんて言いきれない。
今までだったら顔を作れたのに、お嬢様の言葉が突き刺さる。
「ならばこの時だけはリラックスしてください」
「はい」
念入りにマッサージをされ疲れが取れていきうとうとする。
「眠っても大丈夫ですよ」
「はい…」
ずっと眠れなかった私はこんな風にゆっくりと眠れるのはいつ以来かと思った。
目が覚めた時は、マッサージも終わった頃だった。
「一時間も眠っていたんですか」
「はい、相当お疲れのようで…失礼ですが、かなりお体を酷使されております。あまり無理をなさらない方が良いかと…」
「ありがとうございます」
今まで仕事でどんなに大変だった時も平気だったのに。
たった二か月間で過労がたまるなんて弱すぎるわ。
「ハーブティーをご用意しましたのでどうぞ」
「ああ…いい香り」
こんな風にゆっくりお茶を飲むなんて久しぶりだった。
心も体もリフレッシュできそうだと思った私だったが、何故か私の周りに従業員取り囲んでいた。
「では、今からはじめましょうか」
「はい?」
何故か化粧道具やドレスなどを持って私を囲んでいた。
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