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今の現状を詳しく伝えるわけにはいかなかった。
だけど二人は無理に聞き出すことはせずに労りの言葉をかけてくれた。

そんな中。


「ただいま!アン、リサ先生、失礼するよ」


旦那様の声だった。

「叔父様、何ですの?この荷物は」

「え?」

隣で従者が大量の箱を運んでいる。
今どき箱をタワーのように積んでいる図なんてあるのね。


「最近リサ先生はやつれていた…痛ぁ!」


「お嬢様!」



いきなり立ち上がったお嬢様は旦那様の足を思いっきり踏んづけた。
ヒールなので痛いのにさらにギリギリと音がする。

「叔父様、レディーに向かってやつれたとはなんですの?デリカシーがありません」

「旦那様、私は悲しゅうございます。紳士としてそのような無礼極まりない言葉を。だから意中の相手にも逃げられるのです。ああ、嘆かわしい」

「おい、二人共!なんの話だ」


二人して睨まれおどおどする旦那様。
普段は隙が無い方なのに身内には隙だらけだなんて誰が思っただろうか。



「いい加減、足をなんとかしてくれ。痛い」

「嫌ですわ。こんなデリカシーのない叔父様嫌いよ」

「酷いじゃないか!」

「ああ、なんてヘタレなのでしょうか」


何という理不尽。
でもこの二人がを止められる人間などいない。


「私はリサ先生の体調不良を心配してだな…」

「もういいですわ」


流石に気の毒になって来た。
でも、本当にすごい量の箱だわ。

「リサ先生、最近顔色も悪く食欲もないと思ったから宮廷料理人を連れて来たんだ」

「旦那様、連れて来たとは…」

「そのままの言葉だ。Sランクの料理人だ」


隣で会釈する料理人。
胸元のバッチを見てめまいがする。



王室料理人を派遣させるなんて一時間でどれだけの費用がするか。


「それから宮廷で流行しているお菓子だ」

「旦那様、お気持ちは嬉しいのですが…」


箱に入ってるのは宝石のように輝くお菓子だった

果物も沢山入っている。

これは皇室御用達のマンゴーだ。
他にも贅沢の限りを尽くした果物だった。


「あの…これは」

「リサ先生が義両親の世話で疲れていると聞いてな。そんな時は沢山愛を栄養を取り、骨休みをして睡眠を取る事だと子爵夫人に言われてな」


「あの…」

「子爵夫妻が大変心配されていてな。聞けば召使のように働かされていると聞く。よもや夫に虐待されているなんてことはないだろうね?」

「虐待…」

何にその飛躍した噂。
両親には問題ないと話しているし、子爵家にも何も話してないのに。


私の父と懇意な関係の子爵様。

名をハインツ・ルアーノ様。
下級貴族であるが資産家で商人貴族であり、他国とも渡りがある。

奥様は平民でありながらも、貴族の殿方を射止めたシンデレラガールとも呼ばれている。
商家である我が家とも親しくしてくれださり、奥様のマルガリーテ様は社交界のファッションリーダでもあるのだ。


ついでに言えば、伯爵家と私の両親を繋いだのも奥様だった。


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