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しおりを挟む地獄なような日々。
先の見えない迷路に入り口はあるのか。
週末に義姉が止まりに来ては、家事育児すべて丸投げをされて私の疲労は溜まっていく。
週末は早朝から真夜中まで働き続け、顔色も悪くなる一方だった。
「先生、真っ青だわ!大丈夫なの」
「大丈夫ですよ」
お嬢様に心配をかけてしまっている始末だ。
「大丈夫じゃないわ。手がこんなに荒れて…少し前までは白くてすべすべの肌だったのに」
同居私生活は肉体労働が多い。
朝起きて薪割、水汲みから始まり、寝る前に水汲みと薪割で終わる。
薪は実家に出入りしている大工マスターが好意で分けて貰っていた。
二人だけだし、そこまで必要にならなかった。
でも義両親は冷え性なのか常に薪を使う。
薪の値段は上がったこともあり、義姉が持って帰るので余分に用意しておく必要がある。
なので自分で薪を探さなくてはならない。
「その手、水仕事だけではできませんね」
「侍女長」
「手のひらを」
有無を言わせない言葉に従う他なかった。
「先生…」
お嬢様には隠していたのにお見通しだったのかと思うと無駄な時間だったと項垂れる。
「慣れない薪割をなさいましたね」
「は?何で…」
「他にも最近は髪形が変わりましたね」
「そういえば、ずっとアップにして…」
家で髪の手入れをする暇がない。
睡眠時間も限られている中身なりに気を配る時間がない。
「やはり家庭教師としてもう少し慎ましい装いをと思いまして…」
「嘘よ!先生はおしゃれにだって気を使っていたわ。女性は何時でも美しくありたいものだって…なのにこんな荒れ放題で!」
「リサ先生、嘘はいけません。このスッポンのマミーの目は誤魔化されませんよ」
「はっ…はい」
顔が近い。
伯爵家を切り盛りする侍女長。
この邸の鬼とも言われるほどだったし、私のような若輩者が勝てる相手ではない。
「リサ先生、この老いぼれは、伊達に歳を取っていませんよ」
「あの…」
「ここ最近にリサ先生は明らかに疲労困憊ですよ」
鏡に映る私を見て、あまりの酷さに驚いた。
そういえばちゃんと鏡を見たのはいつ以来だったか。
身だしなみを確認するだけ。
それ程に忙しくて、私は心も疲れ切っていたのだ。
「私は何時ものリサ先生に戻って欲しいんです。無理をしている先生なんて見たくありません」
胸に突き刺さる言葉だった。
上手くやれていると思っていたのに、私の驕りだった。
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