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しおりを挟む作った料理は捨てるのはもったいない。
貧しい家庭に育ったわけではないが、我が家では食べ物を粗末にすることは良しとしていない。
「折角だしお隣さんにおすそ分けしよう」
保管できるのは保管しようと思ったのだけど、どうしても処分しないといけない料理をゴミ箱にと思った時だ。
ゴミ箱に捨てられていたのは急いで作ったお茶菓子だった。
「どうして…」
好みじゃなかったのか。
それとも他に理由があるのか。
わざわざ頼まれて作ったタルトにゼリーだった。
「捨てなくても日持ちするのに…お土産とかぶったのかしら」
だとしても食べ物を無駄にしていい理由にならない。
食べたくないなら私が食べるし、お隣さんにおすそ分けをすることもできた。
近所には母子家庭の家も多くいる。
なんだったら孤児院や教会の子供達も三食満足に食事ができないのだ。
「このタルトだけでも一食分の栄養はあるのに」
愛娘が帰省したから浮かれているのも解る。
ロンドの言動が行き過ぎたのも、普段苦労している義姉を労らいたいのと、もしかしたら一家の主として威厳を見せたいのかもしれない。
世間では普段優しい男性が、実家に帰る時だけは亭主関白になると聞いた事がある。
両親や家族には威厳を見せて安心させたいと思うことがある。
深読みして見れば許せる。
腹は立つけれど、無理やり納得させることができる。
「同居してから思い当たる節はあるわ」
「あー!」
眉間に皺をよせ考え込んでいた私にミレイは手を伸ばした。
「お腹がすいたのかしら?」
「だぁ!」
さっきはミルクも離乳食もあまり食べてくれなかった。
「ミレイちゃん、貴女はどんなものが食べたいのかしら」
「あう!」
「しゃべれないわよね?でも、食べたいものを教えてくれないかしら」
ある材料で手当たり次第離乳食を作ることにした。
「お嬢様も偏食が酷かったのよね」
気持ちを切り替え私は今すべきことをしようと考えた。
落ち込んでいても仕方ないし、今はお腹を空かせているミレイに何か食べさせてあげないと。
「アレルギーはないといいのだけど」
できるだけアレルギー反応ができない食材を厳選して食料を確認した。
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「あー!」
赤ちゃん用に離乳食を用意して欲しいと言われて大急ぎで作ったのはカボチャのプリン。
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勿論砂糖は一切使っていないので体にも優しい。
「ミレイちゃん、いい子だから食べてね」
「だー…」
昼食もほとんど食べておらずミルクも飲んでいないのでせめて食べてくれますようにと祈った。
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