8 / 169
8
しおりを挟む義姉の長女のミレイはとにかく手がかかった。
小柄であることもあり、食欲もあまりない。
「あまり飲まないわね」
「リサのミルクが不味いんじゃないか?やっぱり母親が一番だよな」
「でも、ミレイは他の子よりも体が小さくて夜泣きが酷いのよね」
悪戦苦闘している私を見ながら一家の団欒を楽しみながら話し込む光景を見ていると。
「あああ!」
「リサさん、ちゃんとあやさないとだめでしょ?母親は赤ん坊から目を離したらダメなのよ」
「ミレイちゃんはお母さんのところに行きたがって…」
「リサ、赤ん坊一人満足に世話もできないんじゃ嫁失格だろ?これから子供を産んで育てられないだろ」
「だったらロンドも手伝って…」
「姉さん、しばらくミレイの世話をリサに任せていい?この際しっかり学ばせてやらないと。リサの両親は娘に甘すぎるからさ!」
私の言葉を遮り、勝手に決めていく。
何も言ってないのに。
それに私の両親は甘やかしていない。
厳しい時もあるのにどうしてこんなことを言うの。
「酷いわロンド。私の両親をそんな風に悪く言うんなんて…」
「ふぇ…うぇぇぇん!」
私の不安が移ったのかミレイちゃんは泣き出し。
「おい何やっているんだ。ミレイを泣かすなよ」
「もう仕方ない子ね。赤ん坊は伝わりやすいのに。駄目ね」
「まったくだ。これでは先が思いやられる。しばらくミレイで学んだ方がいい…サンディと話がしたいからしばらく外に出て散歩をして来たらどうだ」
「でも、リサさんがいないと給仕はどうするの?」
雑音のように聞こえる。
この人達は何を言っているのだろうか。
私を蔑んで、それでこの場から出て行けと。
泣きたくない。
泣いてはダメだと必死に言い聞かせた私はミレイちゃんを抱きしめながら笑顔を張り付ける。
「お庭に出てきます」
この時私は上手く笑えていたのだろうか。
「あー…まんまぁ!」
「ミレイちゃん…」
「えっぐ…うっ…ああああん」
再び泣きだすミレイを必死にあやしながら心の中で泣いた私は必死に言い聞かせた。
「同居を強いられた妻は孤独だって本当ね」
噂でも聞いていた。
アン様も言っていた言葉を思い出す。
けれど今は最愛の里帰りをしているのだから。
「私は嫁だもの…仕方ないのよ」
自分に必死で言い聞かせる中、ミレイちゃんはようやく泣きやみ邸の中に入るとダイニングには誰もいなった。
テーブルにはグラスが散乱しており、散らかし放題だった。
「食事用意していたのに…」
馬車がない事に気づき四人は出かけたことに気づいた。
1,173
お気に入りに追加
5,126
あなたにおすすめの小説

【完結】婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話


皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。
和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。
「次期当主はエリザベスにしようと思う」
父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。
リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。
「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」
破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?
婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。

【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな
みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」
タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果
富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。
そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。
死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?

自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。
Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。
二人から見下される正妃クローディア。
正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。
国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。
クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。

溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるレフティアの日常は、父親の再婚によって大きく変わることになった。
妾だった継母やその娘である妹は、レフティアのことを疎んでおり、父親はそんな二人を贔屓していた。故にレフティアは、苦しい生活を送ることになったのである。
しかし彼女は、ある時とある事実を知ることになった。
父親が溺愛している妹が、彼と血が繋がっていなかったのである。
レフティアは、その事実を父親に密告した。すると調査が行われて、それが事実であることが判明したのである。
その結果、父親は継母と妹を排斥して、レフティアに愛情を注ぐようになった。
だが、レフティアにとってそんなものは必要なかった。継母や妹ともに自分を虐げていた父親も、彼女にとっては排除するべき対象だったのである。

そんなに優しいメイドが恋しいなら、どうぞ彼女の元に行ってください。私は、弟達と幸せに暮らしますので。
木山楽斗
恋愛
アルムナ・メルスードは、レバデイン王国に暮らす公爵令嬢である。
彼女は、王国の第三王子であるスルーガと婚約していた。しかし、彼は自身に仕えているメイドに思いを寄せていた。
スルーガは、ことあるごとにメイドと比較して、アルムナを罵倒してくる。そんな日々に耐えられなくなったアルムナは、彼と婚約破棄することにした。
婚約破棄したアルムナは、義弟達の誰かと婚約することになった。新しい婚約者が見つからなかったため、身内と結ばれることになったのである。
父親の計らいで、選択権はアルムナに与えられた。こうして、アルムナは弟の内誰と婚約するか、悩むことになるのだった。
※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる