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しおりを挟む急いで邸内を整え、赤ちゃん用の椅子に離乳食の準備。
そのうえ大人五人分の食事を用意しててんてこ舞いだった私は一人で走り回った。
「お義母さん、お皿の準備をおねがいできますか」
「おい、そろそろじゃないか」
「そうだったわ。悪いけれど迎えに行くから後はお願いできないかしら?」
「えっ…」
「母さん、早く迎えに行こう。後は任せたから」
ロンドが義両親を急かしすべてを丸投げをして来た。
「私一人で…」
「これも嫁の役目だろ?侍女の仕事で慣れているし、大丈夫だって」
「そうね?よろしくね」
「帰る前にジュースを冷たくして、甘いものを用意しておいてくれ。サンディは疲れて帰ってくるからな」
「…解りました」
嫁として舅と姑に口答えすべきではない。
そう思い私は言葉を飲み込んだ。
同居生活をしてまだ一年未満。
どちらかが譲らないといけないのだからと我慢をした。
これがそもそもの間違いだった。
「ただいま!」
二時間ほどしてから三人は帰って来たのだが。
「おかえりなさいませ。いらっしゃいませお義姉さん」
「いらっしゃいだなんて、ここはサンディの家でもあるのよ?」
「そうだぞ。他人行儀じゃないか。まったく」
出迎えをするとなぜか怒られてしまった。
そんなにおかしい事を言ったのか。
「ちょっと、そんな言い方」
お義姉さんは咎めてくれたけどロンドは私をしかりつける。
「いいんだよ姉さん、こういうことはしっかりしつけないと。リサ、君もシンパシー家の妻として姉さんを見習ってくれよ。姉さんは僕たちの自慢なんだから‥‥妻が至らないと姉さんの恥になる。解ったか」
この言い方…
何なの?
何時もならこんな風に他人の前で叱ることはしなかったのに。
「もうそのくらいになさいなロイド。まだ同居して間もないんだから、慣れていなくて仕方ないわ。それに妻としての作法はこれから私がしっかり仕込むし」
お義母さんまでどうして?
「母さんまでそんな言い方可哀想よ。ゆっくりでいいのよ。とりあえず冷たい飲み物をくれない?あっ、それから娘にもミルクを上げたいからお水を」
「はい」
遠回しに私のダメっぷりを指摘するようだったけど、何も反論せずに従った。
だけどロイドの態度はこの時だけではない。
この後もロイドの横暴な態度は続き、義母も静観しながら止めることもなかった。
「ミレイがまた泣いているわ」
「リサさんお願い」
「はっ…はい」
お茶の準備をする最中、まだ生後6か月の姪は頻繁に泣き出し、泣き出すと私にあやすように言う義母。
だけどすぐに泣きやませることはできずロイドが私を咎めた。
「おい、子供を泣きやますこともできないのか!」
「今から学べてよかったわね。きっといいお母さんになるわ」
「そうだな。サンディが帰ってきてくれてよかったな」
笑い声が聞こえる中。
私は食事もとれずに一人で姪をあやすことになったのだった。
私を見ながら笑う彼らと一緒に笑う彼らはその後も私のダメ出しを続けたのだった。
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