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第一章
141転落した自称お姫様⑫
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フリーシアの言葉を警備隊は冷ややかな目で見ていた。
「何を馬鹿な事を言っている。カステル様は既に隣国に出発されて二週間も過ぎている」
「世迷言を」
「嘘を重ね過ぎているのだろう。第一あの方には奥方様がいらっしゃる」
この国に既にいないアスランに呼ばれたなどあり得ない。
もし呼ばれたとして、何故国を開けているのか。
アスランが生真面目すぎるのは有名な話だった。
まずありえないが、万一アスランがフリーシアを呼んだのだら事前に報告をするだろう。
「過去にアスラン様と婚約話があったから勘違いしているのだろう」
「噂ではストーキングをんしているらしい」
「ああ、あの脅迫状のような手紙が来ていると王宮の侍女が嘆いていたな」
「悪質なストーカーの容疑も含め、報告した方がいいな」
次から次へと罪が重なり、三人は口を挟むこともできなかった。
(アスランがいない?何でよ…まさか!)
フリーシアはユズリハの方を見た。
(最初から騙されていた?)
手紙を何度も送ったのに返事は中々来なかった。
だからわざわざ国にまで行くので時間を作るように手紙に書いた。
指定されたのはこの日なのに、既に国を出た後だったとなればすべてが計画的だったのではないかと疑っても仕方ないのだが。
「私は、どうしても話がしたいと言われましたのでこの日を指定しましたのよ?」
「何がしましたのよよ!この猫かぶり女!」
さっきまでの上から目線の態度から一変して丁寧な口調で、少し怯えた表情のユズリハの演技は実にわざとらしかった。
「アンタ!よくも!」
フリーシアは怒りのままに暴れようとしたが、警備隊が無理やり押さえつけたことにより敵わなくなった。
「動くな!」
「きゃああ!」
「お前達を連行する!」
頭を床に押さえつけられ痛みで涙が出る。
後ろの二人は既に抜け殻となっている状態だったがユズリハがこちらに近づく。
「いけませんユズリハ様。これは罪人です」
「最後に一言だけ。言葉をかけることを許してください」
「なんと…」
「慈悲深いお方だ」
涙目で訴えるユズリハに警備隊はあっさりと騙されていたがフリーシアは睨みつける。
(この馬鹿共!何で演技に気づかないのよ!)
残った力で抵抗するも動けない状態で頭だけを上げさせられる。
「今までご苦労だったな。貴様の馬鹿さ加減は滑稽だった。初めて会った時からな?」
「は?」
「貴様が密航してくれたおかげで関わった者はすべて死罪にできるわ」
耳元で囁いだ言葉に絶句した。
微笑みながら言うような言葉ではないからだ。
「何を馬鹿な事を言っている。カステル様は既に隣国に出発されて二週間も過ぎている」
「世迷言を」
「嘘を重ね過ぎているのだろう。第一あの方には奥方様がいらっしゃる」
この国に既にいないアスランに呼ばれたなどあり得ない。
もし呼ばれたとして、何故国を開けているのか。
アスランが生真面目すぎるのは有名な話だった。
まずありえないが、万一アスランがフリーシアを呼んだのだら事前に報告をするだろう。
「過去にアスラン様と婚約話があったから勘違いしているのだろう」
「噂ではストーキングをんしているらしい」
「ああ、あの脅迫状のような手紙が来ていると王宮の侍女が嘆いていたな」
「悪質なストーカーの容疑も含め、報告した方がいいな」
次から次へと罪が重なり、三人は口を挟むこともできなかった。
(アスランがいない?何でよ…まさか!)
フリーシアはユズリハの方を見た。
(最初から騙されていた?)
手紙を何度も送ったのに返事は中々来なかった。
だからわざわざ国にまで行くので時間を作るように手紙に書いた。
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「私は、どうしても話がしたいと言われましたのでこの日を指定しましたのよ?」
「何がしましたのよよ!この猫かぶり女!」
さっきまでの上から目線の態度から一変して丁寧な口調で、少し怯えた表情のユズリハの演技は実にわざとらしかった。
「アンタ!よくも!」
フリーシアは怒りのままに暴れようとしたが、警備隊が無理やり押さえつけたことにより敵わなくなった。
「動くな!」
「きゃああ!」
「お前達を連行する!」
頭を床に押さえつけられ痛みで涙が出る。
後ろの二人は既に抜け殻となっている状態だったがユズリハがこちらに近づく。
「いけませんユズリハ様。これは罪人です」
「最後に一言だけ。言葉をかけることを許してください」
「なんと…」
「慈悲深いお方だ」
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(この馬鹿共!何で演技に気づかないのよ!)
残った力で抵抗するも動けない状態で頭だけを上げさせられる。
「今までご苦労だったな。貴様の馬鹿さ加減は滑稽だった。初めて会った時からな?」
「は?」
「貴様が密航してくれたおかげで関わった者はすべて死罪にできるわ」
耳元で囁いだ言葉に絶句した。
微笑みながら言うような言葉ではないからだ。
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