上 下
148 / 156
第一章

137転落した自称お姫様⑧

しおりを挟む


幼い少年の親切を踏みにじった二人は言うまでもなく馬車から降ろされた。
恐ろしい鬼にの睨みに勝てるはずもなかったのだが、足場の悪い地面で足を滑らし転んでしまい泥だらけになる。


「何で…こんな目に」

「お前の所為だぞフリーシア!」

「お父様だって果物を投げつけたじゃない!」

「もう嫌!」

泥だけになりながら歩く三人は疲労困憊で歩くこともできなかった。

・・・・なのだが。


「きゃああ!」

「何故このタイミングで雨が降り出すだ!痛い!」


雨が降って来たかと思えば雹が降ってきて頬に突き刺さり痛かった。

「何だ!」

「いやぁ!痛い!」

「次から次へと!王都はまだなの!」


その後、通り過ぎる牛車はいたが止まってもらえず歩きで王都に向かうことになった。



結局予定より大幅な時間が過ぎて王都に到着した後に到着したのはある邸だった。



「こちらでございます」

「は?何で王宮ではないの?」

「前に来たあのお邸は!」


以前は派手さはないが品の良い邸で何より庭が美しく、王宮の敷地内に建てられていたのだ。
対する今目の前に見える邸は貴族の邸とは名ばかりの下級貴族が住まう三階盾の正方形の邸で貴族の住まう邸とは思えなかった。


しかも門は錆びており、庭も小さい。


「我が家ですわ」

「は?」

「この邸我がカステル家の邸です。王宮内の邸は王宮内で過ごすときの仕事場です。弟の功績により賜りましたが、この度返上することになりましたの」

「返上…何で!」

「嫌ですわ。翡翠宮は元は王族かそれに近しい方が賜る特別の宮ですの」


穏やかに微笑むユズリハに絶句する。


「皆さまがいらっしゃると聞いて、こちらにお招きしましたのよ」

「お招きって‥‥」


聞いていない。
こんなの冗談ではないと内心で思った三人は動揺した。


「爵位と領地は…」

「もちろんお断りしましたわ。当然ですわ…側近として過度な褒美は後に周りとの不和を生みますし。私は弟にも少し謙虚になるように伝えましたの…貴族にならずとも平民のままでもお仕えできますわ」


遠回しにアスランは貴族になる事はないと言っているようなものだった。

「忠義とはそういうものですわ」

「そっ…そんなの!」


ユズリハの言葉にフリーシアは耐えられなくなり反論した。


「そんなの詐欺じゃない!何で…そんなの聞いてないわ!」


何のために隣国に来たのか。
ここまで苦労したのに、そんな思いをしたのにと思い怒りをぶつけた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊
ファンタジー
気が付くとまん丸と太った少女だった?! 痩せたいのに食事を制限しても運動をしても太っていってしまう。 一体私が何をしたというのよーっ! 驚愕の異世界転生、始まり始まり。

寵妃にすべてを奪われ下賜された先は毒薔薇の貴公子でしたが、何故か愛されてしまいました!

ユウ
恋愛
エリーゼは、王妃になる予定だった。 故郷を失い後ろ盾を失くし代わりに王妃として選ばれたのは後から妃候補となった侯爵令嬢だった。 聖女の資格を持ち国に貢献した暁に正妃となりエリーゼは側妃となったが夜の渡りもなく周りから冷遇される日々を送っていた。 日陰の日々を送る中、婚約者であり唯一の理解者にも忘れされる中。 長らく魔物の侵略を受けていた東の大陸を取り戻したことでとある騎士に妃を下賜することとなったのだが、選ばれたのはエリーゼだった。 下賜される相手は冷たく人をよせつけず、猛毒を持つ薔薇の貴公子と呼ばれる男だった。 用済みになったエリーゼは殺されるのかと思ったが… 「私は貴女以外に妻を持つ気はない」 愛されることはないと思っていたのに何故か甘い言葉に甘い笑顔を向けられてしまう。 その頃、すべてを手に入れた側妃から正妃となった聖女に不幸が訪れるのだった。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~

ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。 そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。 自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。 マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――   ※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。    ※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))  書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m    ※小説家になろう様にも投稿しています。

異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか

片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生! 悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした… アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか? 痩せっぽっちの王女様奮闘記。

彼の大切な幼馴染が重い病気になった。妊娠中の婚約者に幼馴染の面倒を見てくれと?

window
恋愛
ウェンディ子爵令嬢とアルス伯爵令息はとても相性がいいカップル。二人とも互いを思いやり温かい心を持っている爽やかな男女。 寝ても起きてもいつも相手のことを恋しく思い一緒にいて話をしているのが心地良く自然な流れで婚約した。 妊娠したことが分かり新しい命が宿ったウェンディは少し照れながら彼に伝えると、歓声を上げて喜んでくれて二人は抱き合い嬉しさではしゃいだ。 そんな幸せなある日に手紙が届く。差出人は彼の幼馴染のエリーゼ。なんでも完治するのに一筋縄でいかない難病にかかり毎日ベットに横たわり辛いと言う。

監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されたやり直し令嬢は立派な魔女を目指します!

古森きり
ファンタジー
幼くして隣国に嫁いだ侯爵令嬢、ディーヴィア・ルージェー。 24時間片時も一人きりにならない隣国の王家文化に疲れ果て、その挙句に「王家の財産を私情で使い果たした」と濡れ衣を賭けられ処刑されてしまった。 しかし処刑の直後、ディーヴィアにやり直す機会を与えるという魔女の声。 目を開けると隣国に嫁ぐ五年前――7歳の頃の姿に若返っていた。 あんな生活二度と嫌! 私は立派な魔女になります! カクヨム、小説家になろう、アルファポリス、ベリカフェに掲載しています。

えっ、これってバッドエンドですか!?

黄昏くれの
恋愛
ここはプラッツェン王立学園。 卒業パーティというめでたい日に突然王子による婚約破棄が宣言される。 あれ、なんだかこれ見覚えがあるような。もしかしてオレ、乙女ゲームの攻略対象の一人になってる!? しかし悪役令嬢も後ろで庇われている少女もなんだが様子がおかしくて・・・? よくある転生、婚約破棄モノ、単発です。

処理中です...