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第一章
134転落した自称お姫様⑤
しおりを挟む三人の傍若無人な態度を右から左に聞き流しながら内心で呆れていた。
(本当に馬鹿な連中…)
港で問題を起こせば自分達の首を絞めるというのに。
「ではだいぶ予定が狂いましたが、どうぞ馬車に」
「フンッ、早く迎えに来ないからでしょう?本当に役に立たない女ね!」
「そうよ。結婚後は小姑なんて邪魔だけだわ」
上から目線で、ユズリハを蔑み馬鹿にする発言をする三人に水軍ギルドを初め、港にいる者達は殺意を抱いていた。
「貴様ら…」
「ユズリハ様になんて口を聞きやがる!」
今にも殺しかねない殺意をぶつけようとするも、ユズリハは手で制止をする。
(殺してやりたいけど、今はこのままにしておかねば)
不愉快であるが、これからこの三人に裁きを与える予定なのだ。
「では皆さん、王都に向かいますので馬車を」
「ユズリハ様、こんな汚い奴隷を乗せるのは勘弁してください。馬車が汚れます」
「何ですって!」
「この私を!」
「無礼者!」
海水で濡れた服に、泥だらけの体。
異臭が酷く通常なら馬車に乗るのは不可能だった。
「大体、この馬車は何なの?白い馬車じゃないじゃない」
「あの馬車は高位貴族…しかも王家に近い方が乗ることを許されています」
「だったらそれを出しなさいよ!」
王家に近い者と言われれば乗らないという選択権はない。
なのだが…
「あいにくその馬車は侯爵以下の貴族が乗ることは許されません。弟は国王陛下の側近故に乗ることが許されましたが…辻馬車がお嫌なら歩かれますか?」
「嫌よ!何で歩かないとだめなのよ」
「貴様馬鹿か?私達は客だぞ!客を接待することもできぬとは!」
何を言っても嫌だと騒ぎ続ける彼らにユズリハは視線を向けた。
ちょうどタイミングよく牛車が通り過ぎた。
「でしたらちょうどよい馬車の変わりがございますわ。広くて乗り心地の良いですよ」
「ならそれにしろ」
「解りました」
ユズリハが指定したのは…
「何よこれ!牛車じゃない!」
「こんなの乗るなんて!」
「ふざけるのもたいがいにしろ!こんな…ひぃ!」
牛車は嫌だと駄々をこねたが、体格の良い男が睨む。
「俺の可愛いピンキーちゃんにケチをつける気か」
「ひぃぃぃ!」
三人は首根っこを掴まれ睨まれる。
力の差は歴然だった。
「皆さんお嫌でしたら、他のを探しますか?」
今この場で嫌なんて言えば殺されると思った三人は大人しくするしかなかった。
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