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第一章
133転落した自称お姫様④
しおりを挟む結局三人が解放されたの三時間後だった。
港を騒がせたことへの注意はあれど、三人が闇ギルドやゴロツキではないと判断されたのだ。
その判断の理由がかなり屈辱的だった。
「この三人、頭がおかしいのか病気だろう」
「こんな馬鹿な娼婦がいるか」
「時間の無駄だ。それに貴族ならこの港に降りないだろう…大方祖国から逃げて来たんだろう」
とのことだった。
実はこの港は船が止まる場所が二つある。
一つは貨物船が止まる現在地だ。
後は貧相な船が止まるので旅客船が止まることはない。
反対側の港はもっと栄えており、尚且つ見回りもしっかりされているのだ。
職務質問をした後に放り出された三人は歩き続けた先で、見知った顔ぶれに遭遇した。
「おや?」
涼し気な表情をするのはユズリハだった。
「なっ…貴様!」
「どういうことなの!」
「私達がどんな思いをしたか!」
怒りはそのままユズリハに向けられた。
初めからちゃんと迎えに来てくれていたらこんなひどい目に合うことはなかったというのに。
「約束の時間にいらっしゃらないから、またすっぽかされたと思いました」
「何だと」
「ここの港は南側。私が指定したのは東側です。ちゃんと手紙に書いたはずでしょうに」
強引に会う約束を取り付けさせた彼らにユズリハは港の場所を指定したのだが、マリンシア王国語で書かれていたのですぐに破り捨てたのだ。
それに船員が案内してくれるだろうと思ったのだ。
これまで船の手配なんてしたこともない、以前は案内される側だったのだから。
しかし現在は違う。
完全なる招かざる客なのだから。
「それにしても随分と酷い臭いですわね」
「誰の所為だとおも言っている!」
「そうよ。すぐに着替えを用意しなさい!」
「こんな格好で過ごすなんて嫌よ!せめてお湯に…」
図々しくも、着替えと風呂の準備を要求したのだが、ユズリハは困った表情をする。
「それは困りましたね?本日は断水しておりますの」
「は?」
「一応海水で良いなら…」
マリンシア王国では年に一度だけ水を使わない日がある。
断水状態になるのだが、その場合はあらかじめ飲み水を用意しているのだ。
「断水…」
「そんなの知った事じゃないわ」
「そうよ!私達はお客様よ!遠路はるばる来てあげたんだから!大体日取りを指定したのはそっちじゃない」
「そうは申されても、急ぎ我が国に来られるとおっしゃったのはどちらですか?」
困った表情をしながらもユズリハはため息をつく。
周りに人がいるのが解っての確信犯だが、ヒステリックに叫ぶ三人は気づいていなかった。
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