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第一章
130転落した自称お姫様①
しおりを挟む時は今から数日前に遡る。
グレーテル達が国を出てしばらく過ぎた頃、入れ違いに、とある一家がマリンシア王国に到着した。
通常の船とは異なり、とても貧相で荷物を乗せるような船だった。
乗り心地は最悪で、しかも個室ではなく団体の部屋で寝不足な三人は気分は最悪だった。
「はぁ、ようやく到着したわ」
「何故こんなに時間がかかったんだ」
「最悪だわ」
既に多額の借金を背負っており、通常の客船に乗ることはできず、格安の船だったの疲れはピークに達していた。
しかしこの船のチケットも彼らのお金で手に入れたのものではない。
人の良い老夫婦からだまし取ったのだ。
後先を考えている余裕はない。
彼らは早くアスランの元へ行き、婚約を復縁させる必要があったのだ。
「それで、ここからどうやって行くの?」
「手紙で今日来ることは伝えてある…何故迎えに来ないんだ」
「そもそも、何故船の手配をしないといけないの?こんな屈辱」
手紙を一方的に出し、会いに来るように何度も手紙を出したが手紙の返事が来ることはなかった。
あまりにも返事がないのでこちらから出向こうとしたのだ。
そんな折、話し合いの場を設けると手紙が来たのだが年明けにと手紙に書かれていたが待っていられなかったのですぐに出国したのだ。
正式な出国手続きをしていないので、旅先の道中は何度も職務質問を受けたりと散々な目に合ったのだが。
「迎えの馬車は」
「その前に喉が渇いたわ」
「そんな金はあるか…」
文句ばかり言う妻と娘にイライラしながらも、迎えの馬車を持っても、待っても迎えが来ることはなかった。
「何で来ないのよ」
「港まで迎えに来るんじゃなかったの!サイテー!」
傍に置いている樽を蹴り、八つ当たりをするフリーシアだったが。
「おい、人の商売品に何してやがる」
「へ?」
背後から頭を掴まれたフリーシア。
体格の良い男がフリーシアの頭を掴みながら睨む。
その辺のゴロツキよりもずっと恐ろしかった。
「何よ…私を誰だと思っているの?」
「あ?どっかの娼婦か…にしては貧相な体だな」
「私が…」
かつては美しく着飾っていたが現在のフリーシアは貧民街にいる平民よりも貧しくし、髪も痛み、コルセットをしていないので、お世辞にもスタイルがいいとは言えない。
だが、今でも自分は美しいと思い込んでいたのだ。
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