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第一章
129排除対象
しおりを挟むようやくすべてが片付いたと安堵するグレーテルとは別に、暗躍していた彼らは密かに祝杯を挙げていた。
「乾杯」
「「乾杯」」
その場には先王も同席していた。
「しかしここまで上手く行くとは」
「馬鹿が馬鹿を吊り上げたというべきか」
「本当に」
新聞を見開くと罪人として裁かれたフリーシアの写真がアップにされている。
「流石ユズリハ。いい仕事をしてくれるわ」
「まぁ、流石アスラン殿の姉君です事」
再び乾杯をしながら上機嫌のフェリス侯爵夫人はにこっこりと微笑む。
「中々の写真写りですわね」
「これは令嬢ではなく老婆だな」
「ええ。このおお口を開けてるショットなんて最高です」
他人の不幸を酒の肴にする二人に怖いとびくびくする国王。
しかしこの場にいる者は国王の味方になる者はいなかったのだから。
「しかし、ここまで上手くシナリオ通りになるとは」
「ユズリハ殿のおかげですわ。あの方、軍師になれますわ」
すべてはユズリハの考えたシナリオ通りになったことを未だに驚いていた。
ここまで完璧な形で邪魔な敵対する派閥を潰せたのは、フリーシアが踊ってくれただけではなくユズリハの策略とも言えるだろう。
「女性なのが惜しいですわ」
「フッ、数年もすれば女が政権を握るだろ」
「それは楽しみですわ」
「フフッ」
美しい女性が笑みを浮かべるも、正直笑えない国王は恐怖心を抱いた。
(そんな世が来たら男はどうなるのか…)
未だに男尊女卑が強い情勢であるが、この二人が女だけの帝国を作ってしまわないか不安を抱く。
「諦めろ」
「父上…」
「その時になったら援助しよう」
「止めてください」
恐怖しかない。
最強の二人がタッグを組み国を作り、新たな政治を作り出した時男はどうなるか。
(ああ…不安だ)
国王の不安を他所にフェリス侯爵夫人は手紙を見て愉快そうにする。
その手紙にはフリーシアの処遇が細かく書き記されており、先王はじっと手紙を見ていた。
「気になりますか?」
「うっ…うむ」
どんなシナリオかは聞かされていたが、あくまでシナリオだ。
事の詳細は聞かされていないので聞きたがったのを察したのだった。
「少し長くなりますので甘いお菓子が必要です」
「そうじゃな」
「かまわぬ。聞かせてくれまいか」
使用人を呼び甘いお菓子と甘い飲み物を用意させ、語られた。
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