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第一章
124油断
しおりを挟む用意されたグラスには片方は薬が入っていた。
麻薬に近しい毒物で神経を麻痺し、洗脳に近い効果がある。
量を間違えれば後に後遺症が残ると言われていたがそんな事どうでも良かった。
(グレーテルはこれで俺の思うがままだ)
酒を一口飲んだグレーテルを見てニヤリと笑った。
「お酒はここまでです。私は貴方と話をしに来ました」
「そう急かすことはないだろう。これからずっと一緒に…」
「これ以上質の悪い嫌がらせはやめていただきたいのです」
「は?」
カーサとグレーテルの会話がずれが生じていた。
「私はこれを最後に警告に来ました。これ以上あのような脅迫状とストーカー行為をなさるのならば出る所まででますので」
「何を!」
(どういうことだ。薬を飲んで俺を見れば魅了されるんじゃないのか!)
薬の効果が弱いのか。
それとも薬の量を少なすぎたか?と思い酒瓶に薬をすべて入れる。
「カーサ様、私は…」
「グレーテル、もう一杯どうだ!」
「結構です。最初の一杯だけで十分です」
「そういわずに!飲むんだ!」
「何です?さっきから」
何が何でも酒を飲ませなくてはと必死になるカーサだったが飲もうとしない。
「もう結構ですわ」
「いいから飲め!飲むんだ!命令だ」
グラスに注いだ酒を無理やり飲ませようとするもグレーテルはその手を掴んだ。
「止めてください!」
「いい加減にしろ!俺の命令を聞け!」
「貴方の命令を聞く必要はありませんわ。何様なの」
その手をはたき、グラスの入った酒は零れ、テーブルに置かれていた酒瓶は割れてしまった。
床に落ちた酒は変色し、毒が入っていたことが解る。
「酒に毒を入れたのね…何所までの最低な人」
「何を言っているんだ!」
「そのお酒は透明だわ。変色するのは毒が入っている証拠…何でしたらその酒を飲んで確かめてくださいな」
氷のような冷たい目はカーサを汚い物を見るような目だった。
「さしずめ、酒に媚薬に近しい毒を入れて体の自由を奪った後手籠めにするつもりだったのでしょう?」
「何を言っているんだ。そんなはず…」
「既に証言は取れています。この店はこちらで買い取ってあります…貴方が違法的な薬を購入したこともね?」
「なっ…」
すべての証拠を掴まれ、床に散らばった酒をハンカチに湿らせるグレーテル。
「こちらは証拠品にさせていただくわ。割れた酒瓶も調べれば貴方の悪事は明らかです」
罠にはめるつもりがまんまと罠にはまってしまったのだった。
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