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第一章

122酒場で②

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酒場で声をかけて来たのはまだ年若い娘で、身なりは質素であるが平民にしては身綺麗だった。


(悪くないが…地味だな)

カーサは自分の相手にしては相応しくないと思ったがそれなりに裕福ならば相手をしてやってもいいと思った。

「何か用か」

「これをある御方から預かってまいりました」


差し出されたのは手紙だった。
平民や商人が使うには上等すぎる紙だった。


裏を見ると。

「これは…」

「さるお方から預かってまいりました」


裏にはグレーテル・クロレスと書かれていた。
字を見る限り本人だと思ったカーサはニヤリと笑った。


(やはり俺の事を!)

内心で勝ったと思った。
どんなに優れた男がいようと相手は所詮平民で自分に勝てるはずがないと優越感を抱く。


(女は優秀な男に惹かれるんだ。多少乱暴な真似をしても魅力があればし違うものだ)


手紙の返事を貰った事で調子に乗るカーサはグレーテルが内心では自分を好いていると勘違いをして、程よく良いが回ってきたこともありいい気分だった。


同時に、新聞で持てはやされるアスランが屈辱を受けると思うと面白くて仕方ない。


「カーサ様、私はグレーテル様の侍女でございます」

「君が?」

「はい、グレーテル様は現在フェリス侯爵家の別邸に留まっております。婚約者のアスラン様は少々束縛の強い方なので、軟禁状態なのです」

「愛されていない男の悲しい習性だな。馬鹿な男めが・・・」

「グレーテル様をお救いで切るのはカーサ様だけでございます。幸いにも三日後はアスラン様は視察に行かれる予定です。その時が好機です」

「そうか。ならば三日後の待っていると伝えてくれ。君の主人を救い出して見せる」

「ありがとうございます。ではそうお伝えします」


そう言いながら侍女は伝票を持っていく。

「おい、それは」

「こちらは私めが・・・大事なお時間をいただいたのですから」

「そうか」



酒代が足りないので食い逃げをしようと思っていたカーサは儲けたと内心で笑った。


これで今後の生活は安泰だ。
三日後にグレーテルを手籠めにしてしまえばもう何も心配することはないと思ったカーサは浮足で酒場を後にした後にある店に向かった。




「あの薬をくれ」

「お客さん。あの薬は媚薬にしては少しキツイですぜ?」


俗にいう闇市だった。
公には買えない薬を売っていたのだ。


「量を間違えれば相手の体に後遺症が残りますぜ」

「問題ない。それからあの薬も」

「精力剤ですか…若いですね」



三日後の準備のために再びカーサは借金をしたのだった。


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