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第一章

121酒場で①

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大勢の貴族が連行されたことは報道された。
下町でも皆噂をしているほどだ。

とある酒場にて。


「なぁ、聞いたか?」

「ああ、一部の貴族の横領や、闇オークションだろ?」

「本当になんて真似してくれたんだ」


新聞を広げながら罪に問われた貴族をここぞというばかりに責める彼ら。
罪に問われた貴族と関わった者は例外なしに裁かれるとことになったのだが、貴族派は事業を多くしている貴族が多いのだ。


「俺達はちゃんと税金を払っているのに。あいつらは…」

「だが、見せしめになるだろ?貴族にも税金を払わせるって弁護士の先生が言っていたんだけどよ。これならできるんじゃねぇか?」

「だな!これで俺達の暮らしも楽になるぞ」


お祝いと言わんばかりにエールで乾杯をする男達だったが一人、この状況を面白く思わない男がいた。


「くそっ!」


テーブルに置かれている新聞を握りしめる。
その手は震えていた。


(こんなタイミングで何故だ!)


新聞には大きく見開きで貴族派失脚と書かれていた。

(何でこんな時に馬鹿な!)



カーサは新聞を今にも破りそうな勢いだったが、そんな真似をしたら弁償させられるのは目に見えていた。

借金を重ねているのでそんな真似はできないのだが、新聞に載っているある男を見ると不愉快で仕方なかった。



アスラン・カステル。
この度の同盟の為に王妃の護衛として同行した男で平民でありながら国王から寵愛され、王太子殿下の側近も許された将来有望な人物ともてはやされてる。


ここ最近ではあるロマンス小説が流行り、舞台にもなっている。

その主役がグレーテルで相手役がアスランとなっている。
不名誉な事に悪役がカーサなのだ。


カーサはアスランという名前を聞くだけで虫唾が走るのだ。



「忌々しい…」


地を這うような声をだしながらカーサは憎いと思った。



(手紙もこの男に握り潰されているんだ!そうに違いない!)



何通もグレーテルに手紙を送ったが、返事が来ることはない。
本来ならば貴族ではないカーサが手紙を送ったからといって必ず本人に届く保証はないのだが、そんなことは頭から抜けてしまっていた。


手紙がちゃんと届いていないのも返事がこないのもアスランが握りつぶしているのだと思い込んでいたのだ。


(やはりグレーテルは騙されているんだ…この俺を愛さないはずはない!)


あれだけの事をしておきながらグレーテルは自分を愛しているのだと思っていたのだ。



変な所でポジティブだった。


「あの…カーサ・フェスト様でよろしいでしょうか」


深酒をしてる最中、年若い娘が声をかけて来た。



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