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第一章
118追い込まれる者達
しおりを挟む恥をかかせようと噛みついた令嬢はその後倍になって跳ね返った。
嫌味を言って周りから責められ泣かしてやろうと思っていたのに泣くことはなく。
むしろ堂々としていた。
公の場でいちゃついたせいで二人の仲の良さをアピールする手助けをしてしまったのだ。
「どうするのだ。私達は言われた通りにしたというのに」
「あの馬鹿娘が!」
矢面に立った令嬢を責める声がしきりなしに増える。
彼らは貴族派であるが派閥争いをしているだけではなく、自分達の利益になるから協力していただけだ。
「シャトル公爵はどういっているんだ」
「連絡が取れない状況でして」
「なんて無責任なんだ…第一あの噂は本当なのか」
一人の男が声を上げた。
王都内で噂に信憑性の無さを感じていた彼らはこのまま付き合っていいのか解らなくなる。
万一の事を考えついていく人間を鞍替えすべきでは?などと考えているのだ。
「ああ、よく考えろ」
「平民となり何もなくなったあの若造を選ぶか」
「社交界での噂が本当なら追い出されたのではなく自分から出て行ったのではないか?」
「そんなことはこの際どうでもいい」
彼らにとってグレーテルとカーサの婚約破棄騒動の真実はどうでもよかった。
自分達に不利益な事が起きるか、どうかだった。
「もう手を切ったほうがいのかもしれん」
「公爵様はもう何時お迎えが来るか解りません…それに最近は感情の起伏が酷く」
「やはり老害か」
自分の事しか考えない彼らはもはや言いたい放題だ。
貴族派に属しているが利益がなければどうでもいいのだ。
現国王の先も短いと思っていた。
だからこそ強い方に流れ貴族が国を治めるのも良いかと思ったが、矢面に立たされるのは御免だった。
「例の件もバレると厄介だ」
「すべての責任はあの方に…我らは早々に逃げた方がいい」
ここに集う貴族達は法律にひっかかるゆなあくどい真似をして来た。
私腹を肥やしてやりたい放題をしていたが、そろそろ潮時だった。
他国の介入により今後は強制調査も入る。
その前に王都を出る準備を進めなくてはならないと思っていた矢先。
足音が近づいてくる。
「何だこの音は」
乱暴にドアが開かれたと思うとスーツ姿に身を包んだ女性達が部屋に入るなり貴族達を拘束した。
「なっ…何だ貴様ら!」
「無礼な!」
わけのわからない彼らはただ抵抗するしかできなかった。
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