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第一章
115仕返し
しおりを挟む大勢の前で恥をかかせ、尚且つ婚約を無茶苦茶にしてやろうという作戦は簡単に失敗したが、まだ諦めていなかった。
(この女!)
嫌味を言った令嬢は少し前に婚約話が破談になったのだ。
自尊心が強く相手に求め過ぎた事で慰謝料を支払うから婚約を辞退させてくれとまで言われたのだ。
相手は財もすべて失ってもいいから婚約はを白紙にして欲しいと言ったのだ。
そこまでして婚約を拒絶したのだから女性側からしたら屈辱以外の何物でもない。
令嬢の母親からすれば娘を侮辱されたと怒り、相手に相応の報いを受けさせろと命じ、相手方に勘当しろとまで言ったのだ。
その後その相手は貴族籍から除籍した後に田舎にて平民の少女と出会い結婚したと聞かされた。
自分とは正反対で美しくもない、貧しい家の娘なのに男は幸せにしていると風の噂で聞かされた。
しかも結婚した妻は子供を身ごもって幸せ絶頂だと聞かされ激怒したのだ。
令嬢はその後、縁談話は中々来なかった。
何故なら貴族を止めて平民になるほどにまで婚約を拒ばまれた噂が未だにあるからだ。
だからこそグレーテルが重なったのだ。
他国に逃げて平民の男と婚約を結んだという事実が許せなかった。
「この恥さらしが!」
感情を抑えきれずグレーテルに向かってワイングラスに入ったワインをかけようとするも。
そのワインはグレーテルにかかることはなかった。
「大丈夫か」
「アスラン!」
咄嗟にアスランがグレーテルの腕を引き、抱き上げた事でワインはかからなかった。
逆にその近くにいた令嬢のドレスを汚してしまった。
「きゃああ!」
「何をするんだ!」
ワインをかけられた令嬢の婚約者が睨む。
「私は悪くありませんわ!この女が…」
「ワインをかけるなんて何事だ。それに先ほどから聞いていれば随分と陰湿な…彼女は我が国の同盟の証として子人するのだろう」
「貴女は国の同盟を壊す気ですの?何様なの」
「なっ…私は!」
グレーテルに対して良い感情を持っていない輩は多い。
ただし、すべてが敵というわけではなく、中立側の貴族もいたのだ。
彼らはまさにその立場にあったのだ。
「大体、決められた婚約者とうまくいかないから逃げるなんてあまりにも非常識だわ」
「非常識なのはカーサ殿だろう?彼は婚約者がいながら浮気三昧をして挙句の果て婚約者の実家の金を勝手に使い挙句の果てに愛人を正妻に迎え、婚約者を下僕のように扱っていたんだぞ」
「どちらが悪いのか明白ですわ。噂でしかありませんでしたが…ですがこれではっきりしましたわ」
「ああ、彼女はこの場で一度も弁解をされなかった」
半信半疑で見ていた二人だったが、グレーテルの態度を見てすぐに理解りたのだ。
噂が故意的に流されたもので、そして誰かが被害者で加害者か。
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