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第一章
114ささやかな嫌がらせ
しおりを挟む王都を騒がせる噂は大きな波紋を呼んだ。
貴族派は、グレーテルの黒い噂をこれでもかと言う程にでっち上げ、グレーテルとアスランを見つけては噂を聞こえるように囁いだ。
「見て」
「良く平然としてしてられるわね」
「恐ろしい女」
グレーテルに悪意を向ける。
集団で悪口を言って追い込むことでグレーテルの精神を弱らせる作戦だった。
…が。
「悪女だんて、私有名人ですわね」
「悪い意味でな」
「あら?お嫌ですの?」
視線が集中する中グレーテルは不敵に微笑む。
まるで噂なんて気にしてないようで笑みを浮かべる姿に悪口を言っていた令嬢は驚く。
彼女達が知るグレーテルは常に顔を俯かせ、他人の顔色を伺う弱い令嬢という印象が強かった。
婚約者に浮気をされても耐えるしかなく最後が国外に逃げたというのが彼女達の認識だったのだが。
「悪女か…お前には似合わないな」
「でも、確かに他の殿方と恋仲になったのですから」
事情を知らない人間からすれば軽薄に見えるかもしれないとさえ思った。
「何で…」
「どうして笑っているの」
「信じられない」
これ見よがしに悪意をぶつけても笑っているグレーテルに驚く。
この状況が気に入らない令嬢は遠回しな嫌味を止めて直截な攻撃に出ることにした。
「これこれらグレーテル様」
「あら?」
「ごきげんよう。噂ではとんでもないことになっていましてよ」
一人の令嬢が声をかける。
グレーテルは知らない顔だがドレスの家紋を見て貴族派の令嬢であることが解る。
「まさか真面目な貴女様があのような事をなさるなんて」
「あのような…とはどんなことでしょう?」
「まぁ、当人が噂をご存じありませんの?」
大げさに騒ぐ令嬢にグレーテルは呆けたように笑顔で言う。
「帰国してからはずっと離宮におりまして、外にで出ておりませんの?」
「外に出ていない?」
「はい、彼が外に出してくれなくて」
「は?」
令嬢は絶句した。
外に出してくれいなという発言を勝手に誤解をしたのだ。
「部屋からも中々だしていただけなくて…ですから皆さん、どんな噂をしているのか知らなくて。先ほどから私に対して視線が気になりましたの」
「グレーテルに見とれているだけだ」
「いやですわ。私になんて…そんな」
肩を抱きながら甘い笑みを浮かべるアスランに恥ずかしそうにするグレーテル。
完全なるバカップルがいちゃつきまくっているだけにしか見えない。
しかも令嬢はパートナーがいない。
独身の令嬢にとっては目に毒でしかなかったのだ。
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