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第一章

113共通の敵

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王族派と貴族派の諍いはずっと昔から存在してた。
シャトル公爵は王位を狙っていたが先代国王から嫌われ、辺境伯爵にも嫌われていた。

そのうち国王暗殺計画を考えていたが、フェリス侯爵家を筆頭に罪を暴かれ謹慎処分を受けていた。

ただし、シャトル公爵が主犯である証拠は見つからなかった。


「だけど物証が見つからなかっただけですわ」

「だろうな…あの腹黒公爵が」


裁判に持ち込むことができなかったのも警戒をしていたからだ。
今では力を失っているとはいえ、王族派の力をそぐ必要があったのだ。

「グレーテルの婚約に馬鹿男を選らんだのも嫌がらせじゃろうな」

「私は当初、貴族派と王族派の関係を少しでも和らげると聞いていましたが怪しいと」

「先代国王への恨み、そして現国王をなんとか失脚させたい。尚且つ作物の生産率が高い領地を欲したのでしょうけど」


シャトル公爵家の領地は現在荒れている。
縮小されている原因の一つが作物が上手く育たなくなったのだ。

その反対にクロレンス領地は作物が豊作で潤っていた。


「例の婚約破棄はあの男にとって計算外…しかも今回の同盟は望まない形だったでしょう」

「国が傾き、赤字続きの状況で国盗りを考えていたのに、豊穣の加護を失い多くの貴族は痛手だったはず」

「だが、噂を信じる者は敵対する派閥ぐらいであろう」


信憑性のない噂を信じる程皆馬鹿ではない。
ただし、敵対する派閥や妬みを感じている人間は面白可笑しく噂を広めてグレーテルを糾弾するだろうが。


「私は大丈夫です」

「だろうな。そなたはそこまで弱くない」

「ええ、貴女に何の落ち度もないなら毅然としていなさい。弱気になればあの馬鹿を調子に乗らせるだけだわ」


三日後には王宮内でパーティーが行われる。
この度の同盟を祝うのだ。

そこでグレーテルはアスランと参加する事になっている。


「無論。あの男は仕掛けてくる可能性がある」

「この度のパーティーは平民でも参加できますものね?そこで接触をしてくるでしょうけど」


「ならば私は逃げるわけにはいきません」


もうこそこそ逃げる必要はない。


「お前は何も悪くない。何の落ち度もないんだ。堂々としていろ」

「ええ」


あの日国を出たのは、幸せになる為だった。


自由になって自分の幸せを探す為に勇気を出した。
だからこそ今度も逃げてはいけない。


幸せになる為に戦うことを選んだのだから。


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