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第一章

112派閥

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「元四公爵家ですか」

ぽつりと囁くグレーテルに、一同は言葉を飲んだ。
特にフェリス侯爵夫人は手を握りしめ、悔しそうな表情をする。


「あの男か」

アスランも覚えがあった。
常に権力をひけらかし、他国に対しても傍若無人の態度で貴族至上主義な前時代的な考えを持っていた。


「あの馬鹿男めが」

「王妃陛下…」

「過去に女が政治に口出しをするな。女は男に従うべきだと馬鹿な事を言った男よ」


女性先進国に否定的な考えを押し付け、国を治めるのは男がすること。
女はお時に従うべきだ、奴隷制度も普通だと。

女性に権利を与えるなと侮辱をして来たのだ。


「私も、何度か顔を合わせたことをあります。まぁ人間扱いではなありませんでしたが」


「でしょうね?私が夫に変わり領地代行をすれば、ここぞとばかりに侮辱を受けたましたし」


女が大きな顔をするなと馬鹿にされ、貴族の顔を汚す堕落した貴族だと言われた時は殺意を抱いたものだ。


「四公爵家は衰退しした理由が自分にあると何故解らんのか」

「同感ですね。未だに殿方が政治を握っていますが、いつまでも女性を粗末にして許されると思う等」



フェリス侯爵家は、今では王侯貴族の中でも資産家としても有名だった。
その理由は内情の功を持って妻を支える侯爵のおかげでもある。

女性だから家にいる。
女性だから外に出て仕事をしてはならないと古い考えを持っていなかった。

何より妻を大事にする夫であった。

「私の夫は世間では甲斐性なしと罵倒されましたが、何がいけませんの?」

「同感ですな。妻を大事にできぬ男こそ甲斐性無しです」

アスランも亭主関白なんてことは時代遅れだと思っている。
前世では男尊女卑が激しくとも、妻を蔑ろにしたことはない。



「私の陛下もじゃ。側妃を迎えることを良しとせぬ」


アクアシア王国でも今代の国王が一夫一婦制を貫いている。
先代国王は側妃を複数迎えていたが、リスクも伴う恐れもあり現代は廃止しているのだ。



「王家に恨みを抱き、あわよくば国を乗っ取る気でいたのでしょうね。でもその機会を完全に奪われた」

「私に恨みを抱いているのでしょうね」


下級貴族でしかないグレーテルの存在がシャトレ公爵の野望を打ち砕いてしまったのだから。


「国が傾き、国王を叩き潰す機会は奪われた。しかも新しい法案を通されたのですから」

「腸が煮えくり返るだろう…」

どうにも頭が悪い考えだと一同は思う。


「グレーテルの醜聞を広めて婚約を破棄にしてどうなる?」

「アスラン…少し怒りを抑えてくださいますか」

「抑えているが?」


冷たい氷の瞳で言われても説得力がない。
しかも無意識に先ほどからティーカップを粉々にしているので眩暈がした。


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