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第一章
107解雇命令
しおりを挟む数日後、国内でも大量の粛正が行われた。
これまで隠れていた罪は公にされ、甘い汁をすすっていた宮廷貴族は財産を失うことになった。
王宮内でも側妃やその侍女を大幅に解雇する事になった。
当初は猛反発を受けたのだが。
国王はこう告げた。
「現在我が国は赤字だ。故にそなた達を解雇したのは美しく優秀であるからだ」
この言葉に反発していた相反の者は言葉を失った。
「残った者は長年王家に仕え外に出すことができぬ者、結婚適齢期を過ぎた者や身分も行き場はない。だがこの場にいる者は見目麗しく、将来もあるであろう」
ここまで持ち上げられれば、未練がましく王宮に留まるなど恥だった。
「承知いたしました」
このように、ある程度滞りなかったのだが。
「恐ろしい戦略だな」
「自尊心の強い方にはおだててあげるのが一番でしょう」
「グレーテル、そなた女帝になれるぞ」
「ご冗談を」
改革の為に話し合いが終わり、多くの貴族を粛正することも叶ったが問題が生じた。
王宮内で無駄なお金を使う女達だ。
側妃を筆頭に無駄な税金を使う連中だ。
特に側妃の侍女は多すぎるので、減らすべきだと思ったが、どう説き伏せるか。
自尊心の強い女性をできるだけ角が立たないように王宮から追い出す方法としてグレーテルが意見を出したのだが、ここまで上手くいくとは思わなかった。
「国庫が赤字であることはある程度の貴族は知っています。故のそこを利用してはどうかと思いまして」
「本当に助かった…あれらは王家に忠義を誓っておらぬ者ばかりじゃ」
「まったく、無駄な人件費だこと」
隣で優雅にお茶を飲む王妃が呆れていた。
その向かいでフェリス侯爵夫人もうんうんと頷いている。
「まぁ、貴族派の勢いが以前は強かったようですから。他国との渡りもある貴族派を抑え込むのはやむ得なかったでしょうし」
「とはいえ、調子に乗らせ過ぎはよくないだろうに」
冷たい視線が突き刺さる。
国王はソファの上で頭を抱えていた。
「陛下…」
「この二人に挟まれたら一国の王もあのようなことになるのか」
アスランは心の底から気の毒に思った。
カステア王国の現国王は決して無能でも悪い王ではないと理解していた。
戦後の国を治めるのは悪くない王だ。
ただ未だに暗躍する貴族が多すぎた事と、己の欲の為にしか動かない者が多すぎたのだ。
先代国王はそんな輩に容赦ない処分をしていたが、戦争が終わった国でそんな真似をすれば国が沈む。
「戦後、ここまで復興されたのは国王陛下の人柄が大きいと存じております」
「アスラン殿!」
「少し前までは伯爵以下の貴族には王宮の出入りも難しくサロンも自由に出入りできる環境はなかったと聞きます。陛下が努力されたと伺っております」
先代国王は戦上手であったが、国を潤させることや、貿易はそこまで得意ではなかった。
いうなれば閉ざされた王室と言える。
その反対に新しい王室を作ったのが今の国王だ。
とは言え、先々代の時代から既に国は赤字を背負っていたのだ。
従国になることは遅かれ早かれこうなっていただろう。
アスランは国王に最大限の礼を尽くしたのだった。
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