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第一章
106不満と暴走
しおりを挟むどの世でも言えることだが、領地を治める側が無能であれば領民の不満は悪化する。
責任を果たしてこその領主であるのに己の欲望の為に領民を蔑ろにする行為は己の首を絞めるのだ。
「想像はしていたが、早々に潰された領地があるな」
「何所です?」
「エレフェスタだ」
「えっ…」
思い出したくもない相手だ。
いろんな意味で顔も思い出したくないし名前も思い出したくない。
「リストの一番上にあるぞ」
「本当…あれ?」
リストを見るとフリーシアとその両親は亡命扱いになっっている。
邸も売却済みになっており何故?と思ったのだ。
「どういうことですの?」
「大方、借金が膨れ上がって邸は借金の担保にされたんだろう。それでも返せないから夜逃げ…というか」
「何です?」
「金を無心できる人間を探して国を出たのだろ…金と時間と労力の無駄だろうに。いや…それで済まないか」
独り言をぶつぶつ言うアスランにムッとした表情をするグレーテル。
いまいち状況がつかめていない。
「アスラン」
「悪い…恐らくこの一家はアクアシア王国にいる」
「はい?」
再び混乱するグレーテルに対してアスランは視線を逸らせた。
(知らない方が幸せだな…なんせあの姉上だ)
国に留まったユズリハの思惑をある程度理解していたアスランは知らない方が幸福だと思った。
本当の意味で未だにユズリハの本性を知らないグレーテルにはあまりにも惨いのだ。
「何度か手紙が届いているのは知っているな」
「はい」
「もはや脅迫状だ」
「脅迫状…」
あまりにも酷い言いぐさであるがアスラン本人からすれば過去に散々馬鹿にされ侮辱をされた元婚約者に今更復縁を迫られても今更だ。
しかも何様なのか、上から目線なのだから。
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「それは…」
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味方の間は心強いが敵に回せば最悪だった。
「何度も断りを入れたのだがまったく聞き入れなかったのでな…万一を考え国を出ている間に姉上が話をつけるということになった」
「よろしいのかしら」
「…というか、姉上が一度ガツンと言ってやりたいと」
一度言い出したら聞かない姉なのでアスランからはどうすることもできなかった。
グレーテルに至っては何もできないことが申し訳なくなるのだが。
「後は帰国してからだ…いいな」
「はい」
アスランの必死過ぎる表情に何も言えなくなるグレーテルはこれ以上聞く気にはなれなかった。
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