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第一章

102微笑みの下で

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話し合いは滞りなかった。
途中大臣と視線が合いそうになったが、グレーテルが何か言われることはなかった。


彼らからすればより有利な条件を付きつけたかったが王妃の冷たい微笑みと脅迫で不可能となったが諦めきれない者もいたのだが、フェリス侯爵夫人とアスランが許さなかった。



その後中休みを挟んだ後にお茶とお菓子が振舞われたのだ。


「少し疲れました。私は何もしていませんが」

「完全な気疲れだ」


あの雰囲気の中で平然とできる方が無理なのだ。
話し合いの時にも大臣はなんとかしてグレーテルを留め置けないかと考えたがすべて阻止されたのだから。


「大臣の目が何とも言えず」

「ああ、あの品定めのような表情か。未だにお前を引き込もうと考えているんだろ」



「何故です」


「交渉の材料にするためだ」


アクシア王国で重要な位置にいるグレーテルを使えば、もっと良い条件を出せると考えた大臣の思惑は明け透けだったがアスランは馬鹿だと思った。


これまで散々冷遇して来たくせに何を今更と思う。
モリアルが社交界でもずっと馬鹿にされ見下されて来たことは聞かされている。


それを手のひらを返してありえないと思う。


「自分で宝を手放したんだ。悔めばいい」

「そういえば前世でも貴方は父が大好きでしたわね」


前世でもアスランは義父を尊敬していた。
決して身分は高くなかったけれど、とても尊敬していたのだ。


「親父殿はそれは聡明で優しい方だった」


「評価が高すぎませんか」

「正統な評価だ」



前世では妻の実家が夫の実家よりも貧しいなんてことはまずない。
その逆はあるのだが。


「城主の小姓でしかないない私を親父殿は本当に良くしてくださった」



あの時の優しさ、温かさは今でも覚えている。
義息子でしかない自分にどれだけの愛情をもって接してくれたか。

教養はあっても真面目過ぎて融通が利かない世渡り下手だったのだから。


「聡明で優しく、強かな方だった」


「きっと喜んでます」

「前世も現世も私は舅殿には恵まれている」

双方ともに優しい義父だった。
だからこそ許せなかった。

前世でもちゃんとした評価を受けなかった。
現世もどうようだ。

だからこそ、本人が許してもアスランは絶対に許さないと誓った。


「アスラン、そんな気負わないでくださいな」

「グレーテル」

「父は喜んでますわ」


ここにいない前世の父。
もしいたら笑ってくれただろうと思うグレーテルはアスランに寄り添った。


「ん?」

「どうした?」

「いえ…なんでも」


ふと視線を感じたグレーテルは窓を見るも人影はなかったので気のせいだと思うことにした。


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