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第一章
101死刑宣告
しおりを挟む国王は生きた心地がしなかった。
今日を迎える数日前に父からある事を聞かされている。
アクアシア王国の王妃は敵に関しては情け容赦のない鬼だと言われている。
ある意味魔王よりも恐ろしい存在だと言われているのだ。
その王妃のお気に入りとなったグレーテルを今後手を出せば国を潰しかねないのだということ。
「父上、既に無理ではありませんか」
「黙れ、この愚息が。貴様は私の恩人の息子の息女が今後幸せになるべく行動せよ。でなければこの国は荒れ地になる。既に加護を失っているのだからな」
グレーテルが豊穣の加護の持ち主だったことは聞かされている。
加護持ちの人間は重宝され、その人間を傷つければ国は荒れると言われている。
歴史の中では加護持ちの者を巡って戦争が起きているのだから。
「グレーテルは聡明な娘だ。恩を恩で返してくれる娘じゃ…良いな、決して間違えるではないぞ」
「父上は同席してくれぬのですか」
「当然じゃ。その場でジュノ王妃陛下にこってり絞られ脅迫されてこい」
助ける気は皆無だった己の父を悪魔だと思った。
以上が一連のやり取りだった。
(まずい、まずい!)
補足すると過去にエレフェスタ家が色々やらかし事をしらされ余計に胃が痛くなった。
「陛下、私からもよろしいでしょうか」
「何だ、侯爵夫人」
もしやフォローをしてくれるのかと思ったのだが。
「ここ二週間で、エレフェスタ家から脅迫に近い手紙が届いております」
「何だと!」
さらに胃が痛くなる。
差し出されたということは読めとのことだ。
「なんじゃ、この内容は…ありえん」
手紙には口に出すのも不愉快すぎる文章だった。
内容は復縁を望むものだが、文章が上から目線で誰が見ても不愉快な文章だった。
「毎日のようにこのような手紙が届き、新たな婚約者であるグレーテルの悪口も書かれておりましてな?こちらとしても困りまして…モリアルは後に爵位を与えられた後に我が国の勅使になる予定です」
「勅使」
「現在も外交の仕事を任せている次第です」
通常他国に移民した民が外交官になるには困難だ。
それを国の勅使となる人間は片手で数える程なのだが、それを許されたモリアルに絶句した。
「彼は人柄もよろしいのですが、他人の懐に入るのは天才的。今では国内で反発していた東の大陸の辺境貴族との仲を取り持ってくれましてね…本当に優秀な者です」
「それは…」
「その癖何度申しても爵位も不要だと申されましてね。欲がなさすぎるのです」
遠回しにお前が野放しにしたのだと責められていた。
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