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第一章
99出迎え
しおりを挟む手紙では目立たないように迎えるとモリアルに訊かされていたはずだ。
なのに何故?と思ったが。
「これでも地味にしましたのよ」
「そーですか」
何を言っても無駄だと妥協するしかなかった。
対する他の二人は、普通にくつろぎお茶を飲んでいる。
「悪くない」
「光栄ですわ王妃陛下」
「侯爵夫人。なかなかの茶葉じゃ」
「こちらはグレーテルが調合してくれたお茶ですのよ」
確かにその昔クロレンス家でとれた茶葉だが改良をしているのフェリス家だった。
「ほぉ?」
「貴族令嬢なのに元婚約者に下女扱いをされて、お茶を淹れるのが上手で掃除も完璧でしたの。ああ、おも出しただけで腸が煮えくり返りますわ」
「やはり殺さなくてはなりませんな」
大人しくお茶を飲んでいたアスランの目が殺人鬼顔負けだった。
「アスラン、気を…」
「俺は冷静だ」
そう言いながらも目が恐ろしかった。
目で人を殺せる程の殺気を感じていたグレーテルはどうやってなだめるか考えていた。
「アスラン、殺すのは後じゃ。この後国王陛下に脅迫…ゲフンゲフン!」
(今、脅迫と言った?)
うっかり言葉を滑らせてしまった王妃に耳を疑う。
既に平民になっているカーサ達に何をする気か不安を抱く。
「港町でのことは聞かせて貰った」
「はい」
「貴族籍を除籍した程度で許されると思っていまい」
港町の病はあと数日もすれば問題が片付くだろう。
今回の事を教訓にして二度と同じ過ちを犯すことはないと思っているが、過去の罪を簡単に消すなんてできるはずもない。
「罪を犯しながら裁かれるぬとはどうなのじゃ?」
「はい、私も正式な裁きを与えるべきかと思っております。ですが今の段階では罪はそこまで重くないのです」
罪を犯したのは貴族時代。
そして証拠は既に隠蔽されているし、闇ギルドは自分の手の内を見せることはない。
過去の犯罪を上手くもみ消しているだろうから難しい。
にも拘わらず二人は諦めていなかった。
「貴族というのは厄介ですわ。平民よりも優遇されお金があれば罪を隠せる」
「ああ、貴族故にな…だが今はどうじゃ?」
「貴族ではなくなり、金もない地位もないとなればねぇ?」
つまり二人は平民になった今、守ってくれるものはなにもない。
そのうえで裁きを与えようと考えている。
「グレーテル。そなたもこのままとは思っていないだろう」
あくどい表情をする王妃に嫌な予感しかしなかった。
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