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第一章
97憎しみの対象
しおりを挟む貴族と平民の身分差別は今に始まった事ではない。
一部では、貴族が商売をした後に何かの過失があった時に立場の弱い平民や商人に責任を擦り付けることはあった。
調査に関しても証拠を残さなければ逃げる手段がある。
その場合、汚れ仕事などを綺麗に片付けてくれる闇ギルドがあった。
彼らはあくどい仕事は専門家で、貴族達の罪を別の誰かに擦り付けるなど動作もなかった。
カーサ達は彼らに依頼をしたのだろう。
こういうことに関しては頭が周るのだから。
「あの男、やはり国の為にも処分した方がいい」
「今まで野放しにしていたのが不思議じゃ」
アスランと王妃の言葉は最もだ。
グレーテルも同情する気は毛頭ないし、むしろ裁かれるべきだと思っていたが、今の段階で裁くのは困難だ。
貴族であった頃の数多の罪は多いが、平民になった今その罪を再び訴えるのは難しいのだ。
「アンタ達、何所の国のもんだ?」
「私達は隣国から商売に来たのです」
「商売っていうと薬か?」
老人はパッと明るい表情をする。
カステア王国では不作続きで薬草も数が少なく全体的の薬が不足しているのだ。
「ここ最近は二つの領地でしか薬草が取れん。値段も決して安いとは言えないからな」
「薬草でしたらクロレンス領地は?」
「確かにあそこは薬草があるが…数が圧倒的にたりねぇ。特に解熱剤の薬草はあまりないんだ」
グレーテルは絶句した。
国全体が作物ができない状態になっているのは聞いていたがクロレンス領地も危ないとはしならなかった。
「だが、薬草以外にもあそこの領主様は食料を少しわけてくださったり炊き出しをしてくださったりと、本当に親切だ」
「そうでしたか…」
クロレンス領地は現在、モリアルの一番信頼する使用人が代行をしてくれている。
国を出る時にすべての権利を任せたのだが、人選は間違っていなかったと思い笑みを浮かべた。
「お話をお聞かせくださったお礼です。少ないですが」
グレーテルは薬草を差し出す。
「こんなにいいのかい?」
「ええ」
解熱剤も入っている。
すべてグレーテルが調合したものだが、薬が不足しているこの町では大助かりだろう。
「恩に着るよ嬢ちゃん」
「褒めて遣わす」
「アンタ随分偉そうだな。まぁ美人だからいいが」
「フッ、醜い老人よ。そなた中々解っているではないか」
「ジュノ様!」
商人の奥様として振舞う気は全くなり。
しかもかなり失礼である。
道中本当に心配になるアスランだった。
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