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第一章
88恐ろしい真実
しおりを挟む威圧感だけで動けなくなる。
すべての者を圧倒させ恐怖を受け付ける覇気。
稀に王の資質を持つ者が持つ。
怒りの感情をぶつければ、気弱な人間は動けない。
「あっ…ああ」
自然界でも強者が牙を見せ威嚇すれば小動物は怯えてしまうようなもの。
最後は食い殺されることを察して恐怖の時間が終わるまで怯えるのだからまさしく地獄だ。
声も出せずに震える三人に呆れたフェリス侯爵夫人は懐から鞭を出す。
「ぎゃあ!」
軽く鞭でカーサの顔を叩く。
「ハッ!」
「気が付きまして」
「何を…」
鞭で打たれたことで正気を取り戻すが、恐怖心が消えたわけではない。
「貴方に真実をお教えしましょう」
「真実?」
「ええ、貴女が利用しぼろ雑巾のように捨てた出来損ないの元婚約者はこちらにおられる先代国王が孫同然に可愛がっている方なのですわ」
「は?」
「正確には先王陛下の親友…いいえ、命の恩人はグレーテルの祖父。そしてモリアル様の名付け親は先代国王ですのよ」
この言葉に三人は耳を疑った。
ありえない。
こんなのは嘘だと思いたかった。
「そんなの…」
「ありえないとお思いになって?そう思うのは当然でしょうね」
もし真実ならば身分が低すぎる。
過去に王家の窮地を救ったものは多くの褒美を与えられている。
そこれこそ爵位だって。
「馬鹿め、クロレンス家は代々真面目で聡明な者が多い。爵位を王家から賜る行為を良しとしない。本来なら侯爵の地位を得ていても良い程の功績もある」
「なら…」
「断ったからだ」
実際先代国王は命の恩人だったモリアルの父に見合うだけの礼をするつもりだった。
望むなら侯爵家の地位も財産もと思ったが。
「行き過ぎた褒美は立場を悪くすると断ったのだ。補足すれば棚ぼたに興味がないとな」
「馬鹿な。頭がおかしい…いかれている」
思わず思った事を口にしたが。
「ぎゃああ!」
「口の利き方をいい加減覚えなさい」
今度は下半身に鞭を打つ。
「あら?失礼…狙う場所を間違えましたわ」
白々しく言い放つフェリス侯爵夫人は懐から除菌スプレーを出す。
「ぐっ…」
「お前は何様なの?何もできない平民風情が…いえ、平民にも失礼ね」
「何を…」
自分は貴族だ。
由緒正しき家柄だと思っていた。
「父君は貴族だったけれどお前の父親は捨て子。平民よ」
「えっ…」
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しかし生真面目すぎる性格に嫌気がさした妻は、男遊びをして女主人出ることを放棄した。
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その子供を夫との間にできたと偽ったのだ。
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真実をしるはずの両親は未だに恐怖心で意識を飛ばしているので確認もできない。
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