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第一章
84ずれた考え
しおりを挟む王宮から手紙が届いた。
当初三人は困惑気味だったが、王家の使者が至急王宮にと馬車まで用意されていることから火急であることはすぐに解った。
三人は顔を見合わせ、笑みを浮かべた。
そう、三人は勘違いをしていた。
王が直接会いたいと言うことは爵位を引き上げるのでは?
もしくは王族に連なる姫を娶って欲しい。
はたまた出世か?などと見当違いな事を考えていた。
「なんてことなのかしら」
「ああ、ようやく運が」
「本当に」
絶対にありえないのに三人はポジティブだった。
婚約破棄騒動から転落の数々だったが、すべて自分で蒔いた種だというのに他人には悲劇の主人公ぶっている。
正式にフリーシアと婚約破棄となった後にもフリーシアが一方的に悪いと噂を流しているのだ。
二度も婚約者に恵まれない自分は世界一不幸だと言っていたが周りは自業自得だろうと思っていることも気づかず、このタイミングで王家と縁を結ぶなんてまずいない。
ないのだが、王宮に呼ばれた事で舞い上がっていたのだ。
「すぐに準備を」
「解りました。急いで着替えないと」
「そうだ、急いで仕立て屋を」
「ああ!」
手紙にも至急と書かれているにも関わらず今から仕立て屋を呼ぼうとするフェスト男爵夫人に王宮の使者達は眉を顰める。
「お急ぎください。そのままで結構ですから」
「何を言うの!ちゃんとした服装ではなくては」
「そうだ!馬鹿を言うな」
「まったくこれだから平民は」
そう言いながら五時間も待たされてしまった後に多忙は国王を待たせることになった。
「嘘だろ…」
「何所の世界に国王陛下を待たせる貴族がいるんだ」
「しかも男爵だぞ」
使者の二人はありえないと思いながらも何を言っても聞かないのでひとまず先に御者に一度王宮に帰り事情を説明することにした。
その三時間後に再度、馬車はフェスト家に戻って来たのだが。
三人の服装はごてごてに着飾った一昔前の成金の装いだった。
「いいのか」
「言うな。あの格好だけでも不敬罪だ。まさしく歩き罪だ」
「違いない」
使者の二人はヒソヒソは無しながら急いで馬車に乗り込んだのだが。
用意された馬車は二台、何故か一台はかなり古びて質素なもので。
「おいどういうことだ!」
「何故私達がこの馬車なの!」
「王命です」
「チッ!」
隠すことなく舌打ちをする彼らは仕方なく馬車に乗る。
乗った馬車が罪人専用だとも知らずに。
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