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第一章
83獅子と猫
しおりを挟むかつて戦後に国を立て直した名君と呼ばれる先代国王は獅子と呼ばれていた。
その反対に現国王は猫のようだと言われていた。
それは実力の差という意味ではない。
現国王は他者に頼る癖がついており、人を使うのが上手かった。
側近が優秀だったこともあるが、特に優秀だったのが王妃だ。
そのおかげである程度の事はこれまで難なくこなしていた。
対する先代国王は王子時代から冷遇され味方となる側近は下級貴族だったり騎士団の騎士だったりと後ろ盾が弱く浅戦争時もある意味責任を押し付けられる形で王位を継がされたようなものだ。
苦労ばかりしてしかも、戦争を経験した王子と、平和な時代にぬくぬくと生きた王子。
差が出ても仕方ないのだ。
「お前を甘やかせすぎた。やはり12歳で国から出して平民として過ごさせればよかったものよ」
「そんな父上!」
「ええい!泣き言を言うではないわ!」
その昔この国にも良き君主を育てるべく平民の暮らしを身を持って叩き込むためだと何代か前の国王が王子、王女に信頼のおける下級貴族に預けて平民と同暮らしをさせていたのだ。
今ではそんなことはさせないが、判断を間違えたと後悔した。
「嫁に散々苦労をかけた」
「先王陛下だけの責任ではありません」
「私達も陛下に甘すぎました」
「そうです!」
現在側近となっているほとんどのものがかつて先代に仕えていた者の息子、孫だった。
故に忠誠心は強かったが現国王にやや過保護だったが、ここまで酷かったとは思わなかった。
現にそこまで無能でも悪い王でもなかった。
先代国王とは違った形で敵国と同盟を結んだり貿易を活発にしたり、和睦を大事にしていた。
貴族達との関係も同様に貴族派と王族派の対立を避けるべくできることはして来たのだ。
だが、やや甘さがあるのだ。
「良いか、お前のすることは一つじゃ」
「ぐっ…ぐるじいでず」
「あのクソ男爵家に重い罰を与え、尚且つ背後にいる貴族を炙り出し、相応の処分を下せ。でなければ父の手で」
「ひぃ!」
もし逆らったら殺される。
今でも怒っているのを必死で理性で抑え込んでいるのが解る。
ちらりと後ろを見るも、側近は視線を逸らせる。
言うまでもないが侍女や女官もニコニコ笑いながらも助けませんよと言っているようではないか。
「承知しました」
考えるまでもなく行動に移した。
その日のうちに手紙を書き強制的にフェスト家の三人を呼び出すことになったのだが。
「王宮から呼び出しですって」
「きっと、良い話です」
「うむ、ようやく光が見えて来たぞ」
何所までもポジティブにしか考えられない三人はいい方にしか考えていなかった。
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