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第一章
82凍り付く王宮
しおりを挟む現在王宮内の謁見の間では敵が侵入した後かのようにボロボロだった。
怪我人はいないものの、柱はぼろぼろ、周りも酷い状況で騎士団はガクガク怯えていた。
「申し開きがあるか?」
「滅相もございません。父上」
現国王はこれ以上無いほど怯えていた。
「我らの命の恩人であるクロレンス家の末裔を追放した理由をこの場で申してみよ。骨は拾ってやる」
「私は君主ですぞ!」
「ああ、王妃がいるだろう」
遠回しにお前はいなくてもいいと言っているようなものだった。
「のぉ?馬鹿息子よ。この父がクロレンス家をどれだけ愛しているかしっていよう?彼らは長きにわたり王家にどれだけ尽くしたと思っている!恩を仇で返しよって!」
「しかし、婚約破棄は当人同士の問題で…私に許可なく勝手にあの娘も…ぎゃああ!」
「グレーテルに責任があると言うのか!」
片手で息子の首をギリギリ絞めるが一応は手加減をしている。
「貴族の婚約は王の許可の元だ…何をしていた!そういう時に諫めるのが役目であろう」
「そんな…たかが男爵家の婚約に」
「この馬鹿者めが!」
そのまま放り投げられ叩きつけられるが誰も止めに入らなかった。
・・・というか入れなかったのだ。
何故なら先代国王は国一番の戦闘力のスキルを持つ。
威嚇するだけで周りを動けなくすることもできるのだ。
というよりもこれまで少し頼りなさ過ぎた国王に良い薬だと思っている者も多いのだ。
「しかもあの連中はモリーにリンチをしたそうだな」
「は?」
「可哀想なモリー、重傷を負って寝てきりだと聞く。隣国に身を置き使者としてきたというのに」
「なっ…」
国王は知らなかったのだ。
「隣国とは…」
「アクアシア王国じゃ。この意味解るであろう?」
「ひぃ!」
アクアシア王国は大国だった。
食糧問題等は多々あるが、軍事力は相当なものだ。
もし戦争になったら国は数日で沈むだろう。
「グレーテルはアクアシア王国王妃のお気に入りじゃ。婚約者は陛下のお気に入りの従者と聞く」
「ああ…」
眩暈がした。
もし万一にでも隣国に知られ怒りを買ったら最悪な事態になる。
「父上!」
「知らん」
「そんなぁ!」
情けなくも退位した父に頼ろうとするが、突っぱねる。
「もう王ではないからな」
「そんなぁ!」
「子供でもあるまいし、自分でなんとかせよ」
これまで優柔不断だったツケが回っていたのだった。
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