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第一章

79手紙

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ひと悶着あった後にアスランの大いなる誤解は解けた後日、モリアルから手紙が届いた。


手紙にはアスランとの婚約を国王陛下が承認したとのことだったが、問題が生じた。
表向きはグレーテルは政略結婚の為に嫁ぐことになったとのことが手紙に書かれていた。


「表向きとは…」

「王命ということにした方が対面がいいか」

アスランは少し複雑だった。
お互いに思い、婚約を結んだのだが現実問題難しい。

「私達の婚約が国同士重要なものであるということした方が安全とのことです」

「安全か…」

モリアルの判断は正しい。
もしこれが政略的ではなく本人同士だけのものならば、第三者が邪魔をするだろう。

「グレーテルが加護持ちと解った以上は…慎重になるべきだからな」

「私の立場はどういうものになるのでしょうか」

確かに今現在はフリーレン王国では豊穣の加護を持つ者されている。
ただし公にされていないのだが、黙っているわけにはいかないのだが、それだけではない。

「父君も加護持ちであるならば色々と厄介なんだ。政治的に」

「では…」

「お前を守る為だ」

万一の事を考え、政略結婚だという名目ならば邪魔はできない。

「お父様が上手く立ち回ってくださった…なっ!」

「どうしたんだ」

手紙を読むと。


「現在フェリス侯爵家に匿われていると」

「匿われている?」

「その…帰国してすぐにフェスト家に襲われそうになったようで」

「…殺していいか?」


手紙にはざっくりとしか書かれていなかった。
帰国して早々にいちゃもんを付けられ、尚且つグレーテルとの復縁を迫られたようだ。


「今更何を!」

「大方、借金が膨れたか。それともあの女に捨てられたかだろう」

「ようするに私は金ヅルですか」

ある程度は予測できた。
国自体が困窮し、王都内では日に日に野菜や小麦粉が高騰しているのだから。


食べることも難しい状況だが、既に借金まみれの男爵家と婚約をしようという家はないだろう。

もし伯爵以上であれば家柄をお金で買うという考えはあるが、カーサと婚約するにはデメリットしかない。


「婚約の許可は無事取れましたが、一度帰国する必要があると」

「だろうな」

正式な婚約の手続きと同盟を結ぶことになった。

「スケジュールを調整する」

「でも…」

「お前一人で行かせるわけないだろ」

波紋を呼ぶ帰国に不安を抱くグレーテルだったが。


(いい機会だ。あの男を始末してやる)


アスランが物騒な事を考えているなどこの時は知るはずもない。

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