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第一章
73さるお方
しおりを挟む現れた二人に冷や汗を流し敬礼をする。
「まぁ座ってくれ」
「そうですわ」
二人は人の良い笑みを浮かべているが、二人は立ったまま座ることはない。
「座ってくださらない?」
「いえっ…」
「フェリス侯爵夫人!私達は!」
一向に座らない二人にフェリス侯爵夫人は一言を告げる。
「座れ」
「「ハッ!無礼ながら着席させていただきます!」」
まるで訓令された軍人の如く言葉に従う二人。
「侯爵夫人、あまり虐めてやるな」
「それにしても融通が利きませんわ」
「いたし方あるまい。かつては侯爵夫人の率いる諜報隊に所属していた者故にな」
実はフェリス侯爵夫人は元特別機関の工作員だった。
その才能を買われ国王の命令で諜報員として活動していた時期がある。
別名鬼軍曹。
現在も騎士団を動かすだけの権力を有している。
王の最後の剣とも言われており、現役時代は暗殺も行っていたのだ。
二人の弁護士は下っ端であったが、フェリス侯爵に憧れていた。
そしてもっとも尊敬する人物が先代国王だった。
「この度は見事であった」
「もったいないお言葉です」
「ありがとうございます」
二人は憧れの人に褒められ満足だった。
この言葉だけでもう何もいらなかかったのだが。
「これは報酬だ。前金だけではちと少なかったからな」
「「はい?」」
テーブルに置かれたのは宝箱だった。
その中には金だけでなく宝石がぎっしりだった。
「あっ…あの!」
「多すぎなのでは?」
明らかに多すぎる。
二人は真っ青になりながらも断ろうとするも、フェリス侯爵夫人が圧力をかけて受け取らせた。
「少々面倒な事を頼んだから…今後も色々頼むことになる」
「滅相もございません」
退位しているとはいえ、未だに絶大なる支持がある先代国王に頼まれたら余程の事がない限り断れないのだ。
「まぁ、そう固くなるな。あの馬鹿どもを完膚なきまで叩き潰してやりたいのだ」
笑っているが目が氷のように冷たかった。
(あの二人は一体何をしたのか)
(温厚で人が好過ぎる陛下をここまで怒らせるなんて!)
カーサとフリーシアにまったく興味がないのだが、温厚で慈悲と抱擁の化身と呼ばれた先代国王をここまで怒らせた原因が気になった。
「陛下、二人にも話してもよろしいですか?」
「ああ」
そしてその理由を知ることになった後。
「あのクソ共!ぶっ殺す」
「殺すだけじゃたりません!」
案の定ブチ切れたのだった。
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