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第一章
72弁護士③
しおりを挟む互いの弁護士が代理人として顔を合わせ今回の事を話し合う。
「ではこの件はこれで」
「はい、問題ありません」
多少の問題はあったが、ようやく案件が片付いたと思った二人だが。
「あの二人終わったわね」
「ええ、本当に」
疲れた表情をする二人は酒場で酒を飲み明かしていた。
通常はこのようなケースは稀なのだが、二人は敵どうしてではない。
むしろ同じ穴の貉だった。
大した報酬額ではないのにこの面倒な案件を引き受けたのだ。
「あそこまでがめつい人間はそういないでしょう」
「私は女性側の馬鹿さに呆れます。聞けば新たな婚約者の国に寄生すると言ってましたが」
「無理でしょう」
普通に考えてないだろうと思った。
なのに何故気づかないのか。
「依頼料を踏み倒される恐れがありましたが前金である御方から報酬をいただきまいしたので…」
「ええ、私も…ですがそれではね?」
実はこの二人。
とある人物により双方の弁護を引き受けて欲しいと依頼された。
断ることができない相手であるが、報酬は望めない。
そう思って難色を示したのだが、前金を支払われ尚且つちゃんとあの二人から依頼料を取るように言われたのだ。
「まさか金制以外の方法で依頼料を取ることになるなんて」
「昔は結構ありましたからね」
エールを飲みながら二人は疲れ故に愚痴を零した。
「伯爵家の土地の権利書もばっちりです」
「こちらも似たようなものです」
二人は弁護士としてありえない腹黒い表情をしていた。
「欲深い人間だわ」
「本当に、一度地獄に落ちるべきです」
二人は弁護士として感情を殺して仕事をしたが、あの二人に関してはどれだけ腸が煮えくるじゃえったか解らない。
「それにしても、あの方を敵に回すとは」
「あの二人はもうこの国で生きて…いえ、他国でもまともな暮らしはできないでしょうね」
「お日様の下で生きれないのは確実です」
うんうんと頷きながら追加のワイン、ウィスキーをじゃんじゃん頼む二人はピッチを上げて飲んでいく。
「今日はとことん飲みましょう!」
「そうだ!飲もう!」
完全に出来上がっていた二人に近づく影が二つ。
「とても盛り上がっているようね」
「混ぜてくれぬか?」
声をかけられて二人は振り向くと、そこには下町の酒場にはまず来るような人物ではないのにいたのだ。
「あっ…貴方様は」
「何故このような場所に」
二人は酔いも覚めるような気分だった。
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