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第一章

71弁護士②

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一方その頃、エレフェスタ家では同様のやり取りが行われていた。


無理をして高い依頼料ったのに思ったような結果にならなかった事にフリーシア達は怒りを隠せなかった。


「どういうこと!何で謝罪文も慰謝料も払われないの!」

「何故だ」

「話が違うわ!」


三人はそろって弁護士を責めるが、理不尽な言い分だった。


「何で慰謝料が支払われないの…お金がないなら土地とかあるじゃない!財産分与って言うのがあるんでしょ」

「フリーシア様は学校に通われていないのですね。間違った知識をお持ちで…ああ、伯爵家は法律にほの字もご存じないのですね」

「「「なっ!」」」

弁護士の言い分に真っ赤になる三人だったが弁護士は淡々と話すだけだ。


「通常夫婦が離縁した場合、いかなる理由でも財産分与は発生します。ですがお二人は婚約しているだけです。婚姻はしていないなら婚約破棄になっても男爵家の遺産は入りません」

「でも慰謝料は!」

「婚約破棄をされたのはお嬢様ですね。通常なら支払う義務があるのはこちらです」

「そんなのおかしいわ!」

「ですから私は慰謝料を支払わなくて済むように先手を打ちました」

「そんなの…」


慰謝料をふんだくってやると意気込んでいたのにと思ったが。


「もしご不満なら別の弁護士を紹介します。ですがその場合調査は最初からやり直しですし、悪い噂が流れるでしょう…裁判をしても時間とお金がかかります」

「裁判して慰謝料は…」

「慰謝料よりも失う者が多いでしょう。新聞で顔が露見し、お家の何も傷がつくでしょう」

貴族にとって醜聞は命取りだ。
ましてや裁判をして新聞であることない事書かれた後に隣国にも不名誉な噂が流れたらすべてが水の泡になるのだから。


「それだけはマズイ」

「万一隣国に噂が流れたら…」

狙っている例の話が白紙になるのは目に見えている。
そうなればエレフェスタ伯爵家は没落した後に地獄に叩き落とされるのだから。


「解った…」

「貴方!」

「お父様!」


エレフェスタ伯爵が渋々了承するのを見て二人は反論する。


「これ以上は無理だ!万一あの男との見合い話が破談になったらどうするのだ!我が家にはもう金がないんだぞ!」

「そんな酷いわ」

「酷い?酷いのはお前だ!誰の所為でこんなことになった!」

「すべて貴女の所為なのよフリーシア。被害者ぶらないで…今まで育ててあげた恩をこんな形で返すなんて!」


醜い争いを繰り返す三人だったが弁護士は最後に告げた。

「ではお約束通り依頼料はこの土地を担保としていただきます」

依頼料を支払えないのでこの土地を担保と言う約束だった。
本来ならありえないのだが、隣国に行く予定だったのでこんな土地は必要ないと書類にサインをしたのだ。

「ハッ、婚約がまとまればこんな邸など不要だ」


これが後々に恐ろしい結末になるとも知らずに。


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