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第一章

70弁護士①

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婚約破棄を告げられた後に、手続きの書類が届くも。
両者ともに慰謝料請求を願い出て来たのだが、どちらも自分側が被害者を訴えた。


・・・・が、代理人となる弁護士からは慰謝料の請求はできなかった。


「何故できないんだ!」


「そうは言いますが、婚約者のフリーシア様に請求はできません」

「何でだ!向こうが一方的に」

「もちろん、その場合貴方に非がないならばの話です。あちらの弁護士は長きにわたり監禁し精神的虐待を受けたとのことです」

「そんな証拠は…」

「証言がございます。邸に監禁していたという証言も」

第三者の証言なので確実だった。
エレフェスタ側の弁護士は早々に手を売って来た。

「通常夫婦ならば奥方様に決定的な非があれば訴えることもできますが、婚約期間中では…」

「なんとかしろ!」

「裁判をしても良いのですが、その場合時間とお金がかかります。そして確実に勝てる保証はありません…ですがこちらが慰謝料を払わないで済むようにはできます」

「くっ…」

「何でよ!」

「被害者はこっちだろうが」

カーサは悔しそうに唇を噛み締め、フェスト男爵夫妻はそろって文句を言う。
今更フリーシアがどうなろうとどうでもよかった。

むしろ邪魔に思っていたので慰謝料を取れるなら万々歳だったのだが、それも無理となるとデメリットばかりだ。


「社交界では悪い噂ばかりです。実際、婚約前のフリーシア令嬢は頻繁にお茶会に夜会に出ていたのに、婚約が決まってから監禁同然で邸に囚われていると…」

「それは我が家の方針で…花嫁修業よ」

「だとしても世間はそう思わないでしょう。前婚約者とその父君を国から追い出した事実は消えません」

「お前は弁護士だろう!」

「はい弁護士です。ですから最大限に貴方様の利益を守っています」


法律を破らない範囲で利益を守ろうとする弁護士だが、感情的にはならないのだ。


(何所までも愚か者が…)


あくまでお客様対応をしているにすぎないが、弁護士はカーサ達を冷めた目で見ていた。
ここまで腐った人間も稀だったからだ。


「それでどうされますか?裁判をした場合、新聞記者も介入してくるでしょう…そうなれば王都にいれなくなるでしょう」

「何故だ!」

「王都にいる新聞記者のほとんどは地方出身者です。特に前クロレンス伯爵様の援助を受けた者も多いでしょうから」


徹底的に叩き潰す為に記事を書かれるだろうと言われ彼らは裁判をするのを断念した。


裁判をするだけの費用は既にないのだから。


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