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第一章
69婚約破棄宣言
しおりを挟む恥を忍んで頼み込んだパーティーでは失敗に終わったカーサはそのまま邸に帰った。
その後に両親にネチネチと嫌味を言われるのは言うまでもない。
「失敗したですって!」
「しかも、今後出入り禁止を命じられるとは!」
今回招待して貰ったパーティーはどの派閥も属しておらず、爵位を引き継いで日が浅い事もありカーサにもそこまで厳しい接し方はしていなかった。
最後の砦とも言える相手だったが、大事なお客を怒らせたことで出入り禁止を命じられたのだ。
「もう他に当てがないのよ!頼みの綱の伯爵家はくだらない事情に失敗したらしいじゃない」
「まったく、あの馬鹿は何をしているんだ」
「フリーシアに何ができると思っているんですか。今更頼っても無駄です」
二人はこの語の及んでフリーシアの実家に頼ろうと考えていたようだがそんなことをしても無意味だとカーサは思っていた。
既にカーサはフリーシアに対して何の魅力も感じていない。
かつてはあれほど最優先にしていたのに今では邸で顔を合わせれば嫌味を言う程度だ。
あの時のお面影はまるでない。
時折夜に部屋で泣いている声が聞こえた時も。
「煩いぞ!」
扉を乱暴に蹴り、静かにしろと怒鳴り散らすだけだ。
ここ数日実家にいったりきたりの往復をして暗い表情をしているがあえて聞かなかった。
思い出しながらため息をつくと馬車が邸の前に止まるのに気づく。
馬車から出て来たのはフリーシアで、顔を俯かせながら邸の中に入るも誰一人として出迎えようともしなかった。
「カーサ」
邸に入り、フリーシアはカーサに声をかけたが…
「まだ金は借りれないのか!」
帰って来たフリーシアを見るなりに早く実家から金を借りろと繰り返しできないと判断すれば。
「お前は本当に役立たずだな。グレーテルならこの程度の事…グレーテルだったら」
等と言い、フリーシアを追い詰めていた。
「だったらグレーテルと結婚すればいいじゃない!」
「は?」
「もういや!こんな男と一秒でも一緒にいるなんて!」
何かが切れたかのように叫ぶ。
「そんなにグレーテルがいいならグレーテルと復縁たらいいわ。婚約破棄をするわ!」
傍に置かれている花瓶をひっくり返し当たり散らす。
「何をする!」
「こんな牢獄にいるぐらいなら隣国に嫁いだ方がマシだわ!」
「は?」
言っている意味が理解できなかった。
「こんなクソ男よりずっといいわ!」
そのまま馬車に乗り込みフリーシアは御者に怒鳴る。
「出してちょうだい!」
逃げるように馬車に乗り込み出て行き誰も追いかけることはなかった。
その数日後婚約破棄と慰謝料請求の書類が届けられたのだった。
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