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第一章
68厳しい視線
しおりを挟む社交界ではカーサの評価は最悪だった。
本人は噂など間を開ければなくなると楽観的に考えていた。
しかし時間が過ぎても噂は消えない。
それどころか悪化をしていたのだ。
「聡明な婚約者がいながら、愛人を作るとは」
「お言葉ですかが、貴族が愛人を作るのは常識の範囲内です」
カーサは怯みそうになるがここで怯えてはならないと思い言葉を放った。
貴族社会では恋愛と結婚は別だと考えられていたのだから。
「何を勘違いをしているのだ」
「余程教養がないと見える。何故今まで気づかなかった…いや、優秀な婚約者がフォローをしていたのか。今の婚約者はフォローもできんようだな」
この場にフリーシアは連れてきていない。
ここ数日顔も合わせず口も聞かないでいるのだから当然と言えば当然だ。
エレフェスタ家からは資金援助を命じられ。
両親からは慰謝料をエレフェスタに請求しろと言われるので邸に帰っても部屋に閉じこもっている。
最近はフリーシアの様子も気にすることもなく、寝所はずっと別々だった。
この場にフリーシアもいないことで仲が悪くなっていることを指摘されているのだが。
(何でここまで言われなくてはならないんだ!)
他人に口出しをされたくないと思ったが反論する暇などなかった。
「婚約者をコロコロ変える方ですもの」
「愛人を持つ解消もない癖に。何様だ」
既婚者達は貴族が愛人を持つ意味をまるで理解していないカーサに呆れていた。
確かに欲望の為に愛人を持つ者もいるが、妻以外に関係を持つには理由がある。
子を成すためだ。
どうしても子供ができにくい体質の女性がいる。
だが、家を存続する為や、派閥争いを避けたり政治的な意味合いを持って側妻を持つのだ。
「結婚前に愛人を持つなんて王族でもありえませんわ」
「本当に教養のない方…貴方、ご自身で無知なのを晒していますわよ」
「くっ…」
既に孤立無援状態で援護射撃はされても庇ってくれる人も守ってくれる人もない。
それだけの事をして来たのだから。
「自分て蒔いた種ですもの。ご自分でなんとかなさいな」
「そうですわ。私達のような女はお嫌いなのでしょう?」
「そんなことは言っておりません」
遠回しに協力は一切しないと宣言されてしまい、ぎょっとなるのだが。
既に夫人達を見下す発言をしているので撤回など不可能だった。
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