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第一章
64承諾
しおりを挟むこの場で聞くのは無粋かと思ったが国王はこの場で許可を求めた。
「モリアル殿、アスランは将来有望で国一番の剣の使い手だ。身分は平民であるが後に爵位を与える予定だ」
「陛下!」
「何より人柄は保障しよう。融通は利かないが忠誠心は強く…その潔癖症であるゆえにな」
唯一の欠点と言えばそこだった。
とにかく生真面目で融通が利かない男であるがそれ以外はこれ以上無いほど有能だった。
「どうであろうか…そなたの娘を妻に」
本来ならば許可を取るような事を言う必要はない。
なのにあえてこんな方法を取ったのはせめてもの誠意だ。
命令ではなくどうかと聞いている。
「陛下、今更ではございませぬか」
「お父様…」
「娘はずっと心を殺して婚約を受け入れ、我慢を強いて来ました。私が非力だった故に…亡くなった妻にも詫びても足りぬと思っておりました…ですが天は私を助けてくださった」
モリアルは目を閉じた。
ようやく安心できると思ったのだ。
「娘を不幸にしてしまう所でした」
「では…」
「アスラン殿、どうか娘を貰ってやっていただけますか」
「ありがとうございます!」
深々と頭を下げるアスランは心のどこかで不安があった。
自分は平民で既に親はいない身で貴族であったグレーテルを嫁にくれるかはわからない。
だがその心配は杞憂だった。
「私はもう平民で言ってみればただの商人でアスラン殿よりも格下になりますぞ」
「いいえ…そのような」
アスランにとってモリアルは舅となり、そして尊敬できる人だった。
貴族籍から除籍した元貴族は過去の栄光を忘れることができず傲慢な態度を取る人間がいるのだが、モリアルは腰が低かった。
爵位は高くないこともあるが苦労してきたことが解る。
「モリアル殿はこれからどうされるのだ」
「一度国に戻ります」
「え?お父様…そんな!」
このタイミングで国に戻るなど自殺行為だった。
「幸い各地で商売をしたいましたので貿易をしていましたので…食料を国に援助する伝手があります」
モリアルはグレーテルが見つかり、この国で生きていくならば安心だと思った。
「待ってくださいモリアル様。今国に帰ればどうなるか!」
「そうでしょうな…あまり良い状況ではないでしょう」
「解っておるのか!現在クロレンス領地はほぼ無傷な状態で他の領地に貴族達は領地を奪おうとするだろう!」
王妃も真っ青な表情になる。
このタイミングで戻るなど思わなかったのだから。
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