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第一章

55伯爵家の失態③

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かつて隣国のアクアシア王国との縁談が持ち上がった。
しかし相手は貴族ではない。

フリーシア自身も国外に嫁ぐのを嫌がったし、相手が貴族ではないことを見下し嫌がり、二人で会うことを避けたり、デートの約束をすっぽかしてカーサと会っていた。


この態度に先方は怒り白紙となった。
ただしアクアシア王国の国王の性格が温厚だったので大事には至らなかったが、印象は最悪だった。


この時はフリーシアも引手数多だと両親も思っていた。
だからこの時も適当な態度を取っていたが、現在フリーシアの醜聞が広がり、貰い手はカーサぐらいだった。


貴族ではないのが不満であるが国王の側近。
しかも現在は第一王子の一番の側近で、特別の待遇で王宮内の離宮を与えられており、そんじょそこらの貴族よりも財産持ちで将来は約束されているも同然だった。


噂では、近いうちに爵位を賜ると聞いていたのだ。


「隣国のあの男に嫁げ。もうあの家はダメだ」

「私を隣国に売るつもりなのですか…」

「このまま惨めな暮らしをするよりもましよ。このままでは我が伯爵家は没落してしまうわ」

「そうだ。これまでの恩を返せるんだぞ!」


二人は自分の事しか考えていない。
娘の幸福など自分達の暮らしの為ならどうでもよかった。


「慰謝料だってあの男は支払えない…なら色仕掛けでもしてあの男と夫婦になれ」

「そうよ。それぐらいできるでしょう?カーサを誘惑して来たのだから…容姿だけしか価値がないのよ」


「そんな…酷い!」


実の娘に投げる言葉ではない。
涙で視界が滲もうとするも誰も庇うことはしない。


遠巻きに見ている使用人達は見て見ぬふりだ。


(どうして…こんな!)


少し前ならフリーシアが悲しい顔をすれば誰もがかけよってくれた。
それが今はどうだろうか、誰も傍に来てくれない。

抱きしめてもくれないのだ。


「だけど、本当に大丈夫なの?」

「あちらも、フリーシアを嫁に欲しいはずだ。顔合わせの席で狼藉をでっちあげればいい…そうなれば」

「そうね。既成事実がなくともそうなるように見せかけてしまえばこっちのものだ」

「ええ、慰謝料を請求できるでしょう?」

既に二人はまともな考えができなくなっている。
そんな真似をすれば外交問題になるのに、そもそも先方がはいそうですかと言ってか応じるはずかないのだ。


「どうせあんな男の嫁になる女などいるはずがない」

アスランを何所までも侮辱するエレフェスタ伯爵だったが後日。


断りの手紙が送られて来る等知る由もない。


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