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第一章
53伯爵家の失態①
しおりを挟む王都からそう遠く離れていない領地、エレフェスタ領地。
何代も続く家柄ではあるが決して大貴族ではないが、海岸沿いに位置していることから真珠などで収入を得ていた。
他にも海産物等で収入を得ていたが、現在は海が荒れて船を出すことはできず真珠も取れなくなり、病が流行っており危機的状況だった。
船乗り達はその病により船を出すことはできず。
その病が領民を苦しめ、一人暮らしの老人等もその病で倒れ職人も減り、エレフェスタ領地が誇る機織り職人も仕事ができない状況下だった。
領民は病に苦しんでいるにもかかわらず、領地が緊迫しているのに伯爵家は自分達の生活を守る為に領民を犠牲にして重税を強いたのだ。
領民を守るは領主の務めであり義務。
その義務を放棄した彼らに一度は領民達は訴えようとしたが邸に行く前に門前払いとなった。
その所為で領民は絶望して、領地を後にした者が続出した。
その数日後に報告を受けたエレンフェスタ家では…
「何だってこんなことに!」
「多くの領民が逃げ出し、いよいよ我が家も立ち行かなくなるわ!どうするの!」
「今考えている!」
「何を考えているの!貴方が悠長なことを言っているから!」
毎日のように夫婦喧嘩は続き、怒鳴り声が響き渡る。
久しぶりに里帰りをしていたフリーシアは気持ちが滅入っていた。
フェスト家では意地の悪い姑に、守ってくれない頼りないカーサは今日も邸にいなかった。
「男爵家は完全に傾き、新たな事業は失敗したと聞くし」
「援助は望めないだろう…だからカステル家に手紙を出したというのに」
「お父様?どういうことなの…」
カステル家と聞き、フリーシアは絶句した。
「何だ?いたのかフリーシア」
「声ぐらいかけなさい」
冷めた目を娘に向ける二人。
フェスト家と同じような邪魔ものだという視線を向けられた。
当初はフェレスと家は余裕があったように見えたが、一部でしかない。
金策に走っていたグレーテルがいなくなればどうなるかなど容易だったのに彼らは気づかなかった。
何より男爵家の信用は聡明で控えめな婚約者の存在のおかげなんて彼らは思いもしなかった。
無償で働く侍女程度にしか見ておらず、これまでどれだけの恩恵を受けていたからしなかったのだから当然だろう。
だが、フリーシアは男爵家が傾くとは思わなかったし。
根っからの箱入り娘で、家が傾いても自分が何かするつもりはなかったし、今後も男爵家の為に働こうという気はさらさなかった。
その態度が目に見えていたことから義母から憎まれて居場所もなく。
フェレスと家に残った使用人たちもフリーシアを女主人として認めることはなかったのだ。
けれど、伯爵家でもフリーシアの環境は同じだったのだ。
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